step3サプリメントを活用する

補充すべき栄養素の優先順位

さまざまな種類のサプリメントから何をどんな基準で選べばいいのか? そのポイントを紹介します。

妊娠、出産のために補充すべき栄養素には優先順位があります

サプリメントの種類は数え切れないほどあると言っても過言ではありません。魅力的なキャッチコピーにつられて、「あれもこれも試してみたい!」と迷ってしまうかもしれません。ところが、よかれと思って摂っているのに、実は、それほど必要のないものだとしたら、無駄なお金を使うことになります。それは、妊娠を望む女性や男性にとって、補充すべき栄養素の優先順位に照らして製品を選択していないからです。


卵子と精子の成育に絶対必要な栄養素とどちらでもいい栄養素があります

妊娠するための絶対条件は、「質のよい卵子と精子が出会い、生命力に溢れた受精卵を得る」ことです。そして、栄養素は、大きく、卵子と精子がすこやかに成育するために"絶対に必要なもの"と"どちらでもいいもの"の2種類に分けることが出来ます。言いかえると、妊娠を望む"全てのカップルに必要なもの"と"一部のカップルに必要なもの"があるというわけです。

卵子と精子がすこやかに成育するために、絶対に必要なのは「たんぱく質」「糖質」「脂質」「ビタミン」「ミネラル」の「5大栄養素」です。およそ50種類の栄養素があります。これらは、卵子や精子の材料そのもので、卵子や精子が分割・成熟するためのエネルギーをつくります。また、卵子や精子の成育の障害になるものを排除する役割も担っています。このうち、どれか1つでも不足すると、代謝障害が発生し、受精卵が成長するための環境が損なわれて生殖機能が低下してしまいます。


バランスのよい食生活+マルチビタミンミネラルのサプリメントが基本です

妊娠を望むカップルにとって、補充すべき成分の優先順位は、人間が生きていく上で、"絶対に"必要とする成分の優先順位です。その順番はそれがないと生きていけない、その時間が短い順番です。具体的には、以下の通りです。

(1)空気 (酸素など)→(2)水 →(3)3大栄養素 →(4)2大栄養素 →(5)その他の栄養素

3大栄養素とは「たんぱく質」「糖質」「脂質」で、2大栄養素は「ビタミン」と「ミネラル」です。ここで、忘れてはいけないのは、それぞれの物質は前の物質や成分が存在しないと、満足に働くことができないということ。エネルギーの材料になる3大栄養素をたくさん摂っても、酸素や水が不十分であれば、効率的よくエネルギーをつくることができません。また、いくらビタミンやミネラルをたくさん摂ったとしても、3大栄養素がバランスよく揃わなければ、本来の機能が発揮できないのです。

妊娠を望むカップルが最初に選択すべきサプリメントは、受精卵のすこやかな成育に欠かせない「ビタミン」や「ミネラル」、つまり「マルチビタミンミネラル」ということになります。実際に選ぶときには、妊娠のために合わせた配合内容のマルチビタミンミネラルを選択し、その上で、それぞれの状況に応じて必要な成分を組み合わせるのが正しい順番です。

また、栄養成分は単独で働くわけではなく、他の物質や栄養成分と連携・協力してはじめて、それぞれの役割を発揮できるのです。そのため、基本的な栄養素のバランスを整えないままに、さまざまなサプリメントや健康食品を摂取しても、残念ながら意味がないのです。


マルチビタミンミネラルと不妊症のリスクや不妊治療の成績との関係

「マルチビタミンミネラル」と妊娠の関係について、参考となるデータを紹介します。

アメリカの女性看護師を対象にした疫学調査「The Nurses' Health Study Ⅱ」(看護士健康調査Ⅱ)で、1万8555名の対象者を8年間追跡調査し、マルチビタミンミネラルのサプリメントの摂取と不妊症リスクの関連を調べた報告があります。(*1)

それによると、マルチビタミンミネラルを摂っている女性ほど、排卵障害の不妊症になりにくいことがわかりました。週に2錠以下のマルチビタミンミネラルを摂取した女性は排卵障害による不妊症のリスクが12%低下、週に3~5錠の摂取では31%、6錠以上の摂取では41%、それぞれ低下しています。

一方、イギリス・ロンドン大学の大学病院で排卵誘発剤を使った不妊治療を受けている女性の患者58名の調査では、一方のグループにマルチビタミンミネラル、もう一方に葉酸のサプリメントを摂取してもらい、3周期の治療終了時点の治療成績を比較しました。(*2)

マルチビタミンミネラルを摂取したグループでは、29組中20組が妊娠、葉酸サプリメントを摂取したグループでは27組中11組が妊娠しています。妊娠率はマルチビタミンミネラル服用グループでは69%、葉酸服用グループでは40.7%、また、継続妊娠率はマルチビタミンミネラル服用グループ60%、葉酸服用グループ25%でした。さらに、マルチビタミンミネラル服用グループのほうが葉酸服用グループに比べて、少ない治療周期で妊娠に至ったという結果でした。


(*1)Iron Intake and Risk of Ovulatory Infertility Chavarro, Jorge E,et al. Obstet Gynecol 2006 Nov;108(5):1145-1152
(*2)Prospective randomized trial of multiple micronutrients in subfertile women undergoing ovulation induction: a pilot study Rina Agrawal,et al. Reprod Biomed Online. 2012 Jan;24(1):54-60.