step5医療の力を借りる

不妊治療とは

「もしかして妊娠しにくい原因があるかも?」。そんなとき、助けになるのが不妊治療です。

不妊治療は「治す」というよりも「アシスト」

「今月も生理が来てしまった・・・」、「もしかして、不妊?」、それは、これまで予想もしていなかった事態で、戸惑いや不安、そして対処がむずかしいと感じるかもしれません。自分たちなりにいろいろやってみたけれど、妊娠する気配がないときには、医療の力を借りる方法もあります。

「不妊治療」というと、「人工授精」や「体外受精」など、なにやら人工的なイメージを抱くかもしれません。しかし、そうした治療をしなくても、その前の段階、たとえば検査を受けている期間に妊娠する人は数多くいます。

ここでは、不妊治療の基本的な考え方を紹介しましょう。

不妊治療には、3つの考え方があります。
(1)妊娠しにくい要因(不妊原因)を治療する
(2)妊娠する確率を高める(卵子と精子を出会いやすくする)
(3)妊娠に至るプロセスをバイパス(迂回)する


不妊治療は、「どこそこが悪いから薬で治そう」「悪い部分を手術で取り除こう」という治療とは、ちょっと違います。もちろん、そのようなケースもあるにはありますが、少数派です。それよりも、男性、女性、それぞれが本来備えている生殖機能がうまく働くように、条件や環境を整える、そのための「アシスト」というのが、不妊治療の考え方です。

さまざまなアシストの一つとして、「タイミング指導」や「薬による治療」、「人工授精」などの一般不妊治療があり、より高度な方法として「体外受精・顕微授精」などの生殖補助医療があります。


●妊娠しにくい要因(不妊原因)を治療する
不妊の検査で、原因と考えられるものが見つかったら、それを治療します。たとえば、「排卵しない」「排卵しにくい」のであれば、「排卵誘発剤を使って排卵を促す治療をする」などです。


●妊娠しにくい要因(不妊原因)を治療する
妊娠の確率を高めるというのは、卵子と精子を出会いやすくすることです。病院で行うタイミング指導では、超音波検査やホルモン検査などで、より正確な排卵日を推測します。また、排卵誘発剤を使って複数の卵胞を育てたり、確実に排卵させるなどの治療で精子と卵子が出会うチャンスを増やします。


●妊娠に至るプロセスをバイパス(迂回)する
妊娠する確率を高める(2)の方法の一つで、卵子と精子を出会いやすくするために、妊娠に至るプロセスの一部をバイパスするものです。たとえば、「射精された精子が子宮に到達する」プロセスをバイパスするのが「人工授精」で、「精子と卵子が受精して、受精卵が卵管から子宮へと移動する」プロセスをバイパスするのが「体外受精」です。これにより、これまでの検査ではわからなかった不妊原因が見つかることがあります。体外受精ならば「受精しているかどうか」が治療により確かめられます。

バイパスすることで、その部分に原因があれば(なくても)それを飛び超えることができるので、妊娠のためのハードルを1つクリアしたといえます。卵管がうまく機能していない場合には体外受精が、精子と卵子が受精しない場合には顕微授精が、問題部分のバイパスに威力を発揮します。とはいえ、バイパスしたからといって、必ず妊娠できるとは限りません。妊娠のメカニズムはまだ解明されていない点が多く、現代の医学ではわからない不妊原因があるかもしれません。また、もともと体外受精の妊娠率は20〜30%程度であり、不妊治療をしたからといって全員が妊娠できるわけではないのです。


治療の主役は、あくまでもカップル

不妊治療の主役は、あくまでも当事者であるカップルです。医師から、検査の結果とそれによる治療方針や治療の見通しをよく聞いて、納得した上で治療を受けましょう。

カップルごとに状況が違い、求めるものも違うため、不妊治療に特定のモデルケースはありません。多くの人が受ける基本的な流れはありますが、それはあくまでも参考と考えましょう。どんな治療を、どんな順番で、どんなペースで受けるのかは、それぞれのカップルが決めることです。それは自分たちが何を優先するか、どうしたいのかを考えることでもあります。

治療を始めて、すぐに妊娠・出産できればいいのですが、残念ながら治療を繰り返しても妊娠に至らないケースは少なくありません。そのときには、次の治療をどうするか、治療の休みや終了なども含め、カップルで話し合う必要が出てきます。

医師が提供する選択肢から、自分たちらしい選択や判断をするためには、不妊治療についてある程度知っておくことも大事でしょう。そして、治療をする上では、医師や病院スタッフとの信頼関係も重要です。

治療について十分理解し、信頼できる医療スタッフのもと、自分たちが納得して治療を受けること。それが、のちのち後悔しない選択につながることでしょう。

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