つまり、いずれの方法が自分たちにふさわしいのか、お二人で結論を出す必要があるということですね。
そこで、 そのための参考にしていただくため、いくつかの観点で、 それぞれの方法の違いを整理してみます。
◎"何をするのか"について
子宮内膜症が、どの程度、妊娠の妨げになっているのか、外からの検査(画像)だけでは正確に把握するには限界があります。
→腹腔鏡手術では、
直接、お腹の中を観察し、それまでみつけることができなかった癒着などがみつかれば、それをはがすなどの治療を施し、卵管や卵管采などの機能の低下を回復させ、その後の自然妊娠を期待します。
つまり、より精度の高い検査で、不妊の原因を探り、原因を治療することで、生殖機能を回復させ、妊娠を目指すものです。
→体外受精では、
子宮内膜症による癒着等があって、卵管や卵管采の機能の低下が疑われる場合、そのプロセスを回避するため、卵子と精子を体外で受精、培養後、子宮に戻します。
つまり、体外受精を実施することで、機能低下が疑われるプロセスをバイパスすることで妊娠を目指すものです。
◎"有効性"について
→腹腔鏡手術では、
子宮卵管造影検査では異常なかった場合でも、約30%くらいの確率で癒着などがみつかると言われています。
術後の妊娠率については、子宮内膜症の程度や施設、医師の技量や熱意にもよると思います。
そのため、あくまで、目安にしか過ぎませんが、術後、2年以内に60~80%は妊娠に至るとの報告があります。
また、たとえ、治療すべき不妊原因がみつからなくても、お腹の中をきれいに洗浄することで、術後半年間は妊娠しやすくなるとの報告もあります。
→体外受精では、
30代前半では、バイパス術によって、理論的には、周期あたり20~30%と、自然妊娠と同様の妊娠の確率になると考えられます。
◎"負担"について
→腹腔鏡手術では、
全身麻酔下で実施します。
1000件に1件くらいの割合で、開腹手術に移行せざるを得ない合併症がおこるとされています。
入院が必要です(日数は2日から数日)。
費用は20~30万円(施設や入院日数のよっても異なります)。
→体外受精では、
1治療周期中に卵巣刺激のための注射(刺激法によって回数が異なります)、採卵、胚移植等で通院。
薬の副作用や多胎妊娠率が高くなる等のリスクが伴います。
費用は30~40万円(施設や方法、状況により異なります)。
◎"考え方"について
→腹腔鏡手術について
生殖機能の低下を回復させて、自然妊娠を目指す。
→体外受精について
生殖機能の低下をバイパスして、早期の妊娠を目指す。
いかがでしょうか?
考え方としては、 "治療"するのか、"バイパス"してしまうのか、そして、"自然に近い方法で妊娠する"ことにこだわるのか、"早く妊娠する"ことにこだわるのかということになるでしょうか。
腹腔鏡手術を選択した場合でも、術後1~2年経過しても妊娠しない場合には、その時には、 体外受精に移行するという進み方もあります。
また、治療を受ける環境という観点から言えば、最近は、体外受精や顕微授精などの高度生殖医療の技術が進歩し、一般化しましたから、体外受精や顕微授精に熱心な先生や施設はたくさんあります。
ところが、腹腔鏡手術を受けて、自然妊娠を希望しても、腹腔鏡手術の経験が豊富で、高い技量と熱意を備えた先生と出会えるかどうかも、大切なことかもしれません。
さて、不妊治療は、命に関わるようなケースは少なく、価値観とか考え方に関わるところがあります。
そのため、どんな治療を選択するのかは、いろいろな考え方があって、当然のことと思います。
また、不妊という状態や不妊治療はとても複雑なところがあり、こうすれば必ず、妊娠できるという治療法を予め正確に予測することは困難です。
そのため、最後に付け加えたいのは、後悔しない選択が大切だということです。
また、どんな治療を受けるのかについては、治療を受ける側であるご夫婦が決定すべきなのですが、治療方法そのものを比較して、検討することもさることながら、自分たちの状況に最適な方法を提案してくれる、技量と熱意に溢れた先生を信じるということも、違った次元で、とても大切なことのように思えてなりません。