3年前に「The Journal of Reproductive Medicine」という生殖医学誌に掲載された論文が、今、アメリカで大変話題になっています。
どんな論文かと言いますと、「祈れば妊娠率アップ」というテーマで、体外受精を受けている女性を2つのグループに分けて、一方のグループの女性にだけ、あるキリスト教徒の団体が、妊娠祈願の祈りをささげた(祈祷のようなもの?)ところ、祈ってもらった女性グループの妊娠率は約50%、祈ってもらわなかった女性グループの妊娠率が約25%と、要するに、祈ってもらうことで妊娠率が2倍になったというのです。
このような、ある意味、ショッキングな調査研究結果が、コロンビア大学の著名な研究者によって、権威ある生殖医学雑誌に発表されたものですから、発表直後から、専門家からは、論文の内容は"でっちあげ"との批判や非難が続出し、大変な騒動になったという訳です。
コロンビア大学や論文を掲載した医学雑誌は、それぞれの権威にかかわることとして調査に乗り出したほどです。
最近になって、コロンビア大学の研究者は、自分は、直接、実験の実施に関わった訳ではなく、ただ、論文の監修者として名前を貸しただけであると釈明し、論文から自分の名前を削除したことで、一応、調査は一区切りしたようです。
この実験に関しては、宗教団体の宣伝が目的だったのか、本当に医者が信仰の力で妊娠率が上がると信じたのか、報道からだけでは、その真相は、よく分かりません。
ただ、心の状態が及す妊娠への影響という観点から考えると、単に、"オカルト的なもの"として、一刀両断に切り捨ててよいものでしょうか?
過度に心配することや治療のストレスが、妊娠には明らかになっているものの、それでは、どのように対処すれば良いのか、肝心の"心の持ち方"に関して、 誰も教えてくれません。そんなふうに、心の領域に関することが置き去りにされているのは、全くの片手落ちと言わざるを得ません。
子宝温泉につかり、子宝神社にお参りするのはまだしも、わけのわからない子宝グッズが、まことしやかに法外な価格で飛ぶように売れているのは、自分たちの努力だけでは、どうしようもないことに、何を、どうすれば良いのか、よく分からないからに他なりません。
不妊治療の専門医も妊娠への秘訣として、必ず、"心の持ち方"を指摘します。
それにもかかわらず、患者に施すのは、カラダへの治療のみ、 というのが現実です。
今年こそは、そんな渾沌を整備して、多くの方々のお役に立てればと強く思う次第です。