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 妊娠しやすいカラダづくり No.1086            2024/4/21
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:体外受精を受けている女性の睡眠の質
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Apr. 2024__________________________________________

 体外受精を受けている女性の睡眠の質
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体外受精を受けている女性では、治療が進むにつれて睡眠の質が徐々に低下し、治療が長引くほど、経済的負担が大きくなるほど、その傾向が強くなり、睡眠の質の低下と治療の副作用が関連することが、最新の研究でわかりました(1)。

睡眠の質は、体外受精の治療成績や男性の精子の質に影響を及ぼすという研究報告が相次いでなされています。

今回の研究は、治療のストレスが睡眠の質を低下させることが示唆されました。

◎どんな研究だったのか?
体外受精治療を受ける女性の睡眠の質に関連する因子を調べ、治療周期における睡眠の質の変化を調べるための縦断研究が、トルコのイズミルにある2つの不妊治療クリニックで、158名の女性患者を対象に実施されました。

治療開始時、採卵当日、胚移植後に、専用の質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index、Visual Analogue Stress Scale)を用いて、質問の質をスコア化しました。

◎どんな結果だったのか?
被験者女性の睡眠の質のスコアは、治療が進むにつれて、有意な差で、徐々に低下することがわかりました。

また、ストレスと睡眠の質の間には強い正の相関関係が認められました。

さらに、高齢やシフト勤務、治療期間化、経済的負担増は、睡眠の質の低下と関連することがわかりました。

卵巣刺激開始から採卵日までの乳房膨満感や腹部膨満感、痛み、胚移植後の吐き気と疲労が睡眠の質の低下と関係することも明らかになりました。

これらの結果から、体外受精の治療が進みに従って、ストレスの増加が睡眠の質の低下に関連し、治療の長期化や経済的な負担感も睡眠の質の低下をもたらし、睡眠の質の低下は治療の副作用とも関連することがわかりました。

◎睡眠の質と体外受精治療成績
体外受精や顕微授精を受けている女性にとって、良好な睡眠の質は高い妊娠率や出産率に関連するという中国からの研究報告があります(2)。

山東大学生殖医療センターで2019年7月から2020年7月に治療を開始したART女性患者7847人のうち、3183人を対象として、睡眠と妊娠率や出産率、流産率との関係を調べることを目的とした前向け研究です。

胚移植前に質問票を用いて、睡眠時間や睡眠の質、朝型・夜型・中間型かを調べ、胚移植後の治療成績との関係が調べられています。

その結果、睡眠の質が悪い女性に比べて、睡眠の質が良い女性は、臨床妊娠率(69.3%対65.1%)や出産率(50.5%対45.7%)が高く、睡眠の質が高い女性は悪い女性よりも臨床妊娠率が7%、出産率が12%高かったというのです。

その一方で、睡眠時間は、治療成績に関連しなかったことから、治療成績に影響するのは睡眠の長さではなく、質であることが示唆されたというものです。

◎体外受精で感じるストレス
体外受精を受けているカップルを対象に、それぞれの治療段階(hmg注射・hcg注射・採卵・受精確認・胚移植・胚移植8日目・妊娠判定時)のカップルの心の苦痛のレベルを測定した研究報告(3)があります。

それによると、カップルの心の苦痛レベルは、胚移植後までは、ほとんどフラットですが、妊娠判定時にだけ飛びぬけて高くなるというのです。

今回の研究では、ストレスと睡眠の質の低下はリンクしていて、高齢の女性や治療が長期化することで、その傾向が強くなることがわかりました。

このことは、体外受精における心の苦痛の源は、結果が伴わない治療を繰り返すことにあるということを教えてくれています。

つまり、心の苦痛の最も大きな原因は、"治療が報われないこと"にあると。

その一方、妊娠の秘訣は、その時々の結果に一喜一憂することなく、たんたんと治療を受けるということだと、ドクターの経験則として語られることがよくあります。

要するに、心の状態をフラットに保つということです。

そんな心の状態の変化と睡眠の質と密接に関連しているわけですから、ストレスマネジメントの一環として、睡眠の質を高めることが有効な取り組み方になるのかもしれません。

たとえば、過度な期待を抱くことなく、認識と現実のギャップをできるだけ小さくするということになるのかもしれません。

特に、IT技術が進歩し、さまざまなことがショートカット的に便利に処理できるようになると、そのことが当たり前な感覚になると、生殖のプロセスまでショートカットできるかのような感覚になってしまわないとも限りません。

そんな脳の感覚と身体の営みのスピード感のギャップは、不要なストレスや焦り、不安、心配を大きくし、いいことなど、なにもありません。

妊活とは、妊娠を促進するための活動でもなんでもなく、私たちの身体の働きについて勉強し、理解を深めるということなのかもしれません。


文献)
1)J Reprod Infant Psychol. 2024 Apr 8:1-16. doi: 10.1080/02646838.2024.2339481. 
2)Fertili Steril 2023; 119: 47
3))Social Science & Medicine. 2011; 73: 87.

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

自然のサイクルに同時させることは、心身の健康状態にも良好な影響を及ぼすはずです。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1086
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お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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◎発行部数
・自社配信: 1,540部
・まぐまぐ: 2,036部
・合計部数: 3,576部(4月21日現在)
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