世に出回っている不妊関連の書籍にしろ、サイトにしろ、"頑張って!"という言葉をよくみかけます。
一体、何を"頑張れ"というのでしょうか?
私(細川)は、これほど、無責任な言葉はないと思っています。
よくよく考えてみると、 何を頑張ればよいのかよく分からない、というケースが多いように思うからです。
もっと、感情的に言うと、頑張って妊娠出来るものならば誰も苦労などしない、ということになるでしょうか。
頑張りたいのは、やまやまなんだけど、頑張れないというか、 何を頑張っていいのか、さっぱり分からないのが本当のところなのです。
実は、これは、不妊というものの特徴的なところを、見事にあらわしているようにも思います。
何が原因でそれまで妊娠しなかったのか、よく分からない、そして、原因がよく分からないのですから、どうすれば確実に妊娠出来るのか、もっと分からない訳です。
要するに、ほとんどのケースは、どうしようもないということです。
あ、くれぐれも、"どうしようもない"ということに、慌てて、悲観しないで下さい。
どうしようもないということは、 決して、妊娠できないと言っているのではなく、今、確実に妊娠するためには何をすれば良いのかが、分からないということで、統計的に言うと、それでも、皆さん、いつかは妊娠されているのです。
ちょっと、話しがややこしくなってきました。
不妊症と言われるほとんどのケース、感覚的に言うと、70~80%くらいでしょうか、なぜ、妊娠しないのかよく分からない、そして、どうすれば、妊娠出来るのかが分からない夫婦に向かって、"頑張れ!"はないでしょう! ということを言いたかったのです。
そもそも、頑張るということを辞書で調べてみると、困難にめげないで、我慢してやりぬく、とあります。
頑張って、排卵し、着床させるものでしょうか?
もしくは、頑張れば、排卵し、着床するものなのでしょうか?
出産というものは、痛みという困難にめげないで、我慢してやりぬかないといけない、すなわち、頑張らないといけないのでしょうけど、妊娠までの一連のプロセスは、 なんら、頑張る必要はありません。
よく、子づくりを頑張って!と言うのは、皮肉っぽく言っているだけであって、もしも、愛するパートナーとのセックスが、"困難にめげずに、我慢してやりぬく"ものであるならば、不妊とは全く別の問題が夫婦間にあるということになります。
もしも、不妊治療を受けなければ妊娠出来ないことが判明した夫婦に対して、恥ずかしい思いをしたり、屈辱的な思いをするかもしれないし、カラダに痛みや負担を伴い、お金もかかる、そんな不妊治療を、"困難にめげずに、我慢してやりぬいて"!という励ましであるならば、よく分かります。
ところが、誤解を恐れずに言えば、"頑張れ"という励ましは、なんの励ましにもならず、それどころか、間違った頑張りが、ちょっとした悲劇を招いてしまっているように思えてなりません。
【弊害その1】
"頑張って"タイミングを狙うばかりに、セックスが月に1日のみになり、セックスが義務化し、夫婦間に溝が出来てしまった。
【弊害その2】
"頑張って"不妊に関する勉強したが、現実はその通りにいかないことにストレスが増大してしまった。
【弊害その3】
排卵がきちんとあるにもかかわらず、"頑張って"排卵誘発剤を飲み、さらに、"頑張って"強い作用の薬を飲み続けたところ、かえって、サイクルが乱れ、排卵しにくくなってしまった。
【弊害その4】
"頑張れ"ば、当然、報われると信じていたので、頑張れば頑張るほど、生理が来た時の落胆が大きくなり、ストレスが増大し、妊娠どころではなくなった。
いかがでしょうか?
あなたを悩ませている正体が徐々にみえてきたでしょうか?
まずは、"頑張る"ということは、必ず、その次に"報われる"という言葉がくるものです。
私たちは、頑張れば、必ずや、報われるという方程式が、カラダに刷り込まれています。
ところが、妊娠するということは、何も問題のないカップルの自然妊娠にしろ、不妊治療による妊娠にしろ、成功率は、数パーセントから20数パーセントなのです。1周期あたりで見ると、ほとんどは妊娠しないのです。
"報われない"場合のほうが多いのです。
生殖活動というものは、ある意味、私たちの努力や頑張りとは、別の次元で進行しているもののようです。
心臓の動きを止めたりといった内臓の動きは、自分のカラダであっても、自在にはなりません。
同様に、生殖ホルモンが規則正しい生殖サイクルを作り出し、卵巣や子宮、はたまた、精巣の働きを支配しながら、卵や精子を育み、出会わせ、生命を生み出すプロセスは、私たちの意志や力ではコントロールできない世界です。
内分泌(ホルモン)や自律神経が支配する世界、それは、私たちの意識の世界ではない無意識の世界であると言えます。
ということは、意識の世界で頑張るよりも、意識の世界から、無意識の世界に働きかけることです。
その窓口になるのが、カラダのリズムやバランスを整えること、すなわち、私たちの推奨する、 "妊娠しやすいカラダづくり"に他なりません。