タイミング法の"タイミング"は女性だけのタイミングなのか?
滅多にないことですが、数日前に、Mさんという男性から、ちょっと悲しいメールをいただきました。パートナーが通院をはじめてから、夫婦生活がうまくいかなくなってしまったと言うのです。
"男にも都合というものがありますからね・・・"と。
タイミング法、すなわち、ドクターのアドバイスのもとに、出来るだけ妊娠の可能性の高い日にセックスするというものですが、このタイミング法というもの、諸刃の剣的なところがあるようで、もしも、間違った使い方をしてしまうと、かえって、妊娠が遠のいてしまう結果になりかねないようです。
実際に、このタイミング法がきっかけで、射精できなくなってしまうケースが急増しているとの報告があります。
タイミング法について、何を、どのように、間違ってしまうのでしょうか?
それは、タイミング法の"タイミング"を、お互いのタイミングではなく、女性だけのタイミングであると受け止めてしまうことだと思うのです。
確かに、卵子が排卵される機会は、周期中に、たったの1回なわけですから、新鮮な卵子と精子が出会うためには、生理的には、常に、射精可能とされている精子が、卵子が排卵されるタイミングに合わせることにはなるのでしょう。
ただ、身体のメカニズムがそうなっているからといって、いつでもスタンバイOKでしょ?と、当然のごとくに思われると、オトコは、大変、デリケートな状況に陥ってしまうわけです。
その結果、起つべきときに起たなくなったり(ED)、出るべきときに出なくなったり(射精障害)、そこまで、行かなくても、精子の元気がなくなってしまうのです。
大切なのは、"新鮮"な卵子と"元気"な精子が出会うことです。
いくら、卵子が新鮮でも、精子に元気がなければ、言葉は悪いですが、"片手落ち"と言わざるを得ません。
タイミング法のタイミングは、女性だけのものではない、男性にもタイミングというものがある、そのことを知っておいていただくだけでも、タイミング法の効果が高まるに違いないと思うわけです。
不妊治療は女性だけに施すものなのか?
タイミング法のタイミングとは、女性だけのタイミングであると誤解されやすいのと同様に、不妊治療とは、女性のほうに施されるものであると、受け止められているように思えてなりません。よく、パートナーが"協力的であるかどうか"、なんていうことが話題になることがあるようですが、まさに、そういうことではないでしょうか?
もちろん、受精から出産に至るまで、新しい生命の誕生のほとんどのプロセスは、女性のお腹の中で進むものです。
ですから、そのプロセスを阻む何らかの異常に対しての治療となると、主に女性の身体に施されることになるのは当然でしょう。
ところが、至極、当たり前なことなのですが、治療とは、問題のあるところに施し、その問題を解消するものです。
ですから、精液検査の結果が思わしくなければ、まずは、そのことを改善するための治療があってしかるべきでしょう。
それにもかかわらず、最近、富に耳にするのは、精液検査の結果、男性不妊と診断されると、すぐに顕微授精に進んでしまうケースです。
もちろん、母親になる女性の年齢によっては、そのような方針が得策であることもあるでしょう。
ところが、精子は男性の健康を映す鏡であると言われるように、男性不妊の背景には、何らかの異常が隠れている可能性もあります。
たとえ、明確な原因がなくても、男性不妊を治療することで、少しでも精子の状態が改善されれば、女性に施さざるを得ない治療が、軽くて済むことだってあるわけです。
質のよい卵子が大切なように、質のよい精子に巡り合うこともとても大切なのです。
東京の男性不妊専門クリニック、恵比寿つじクリニック院長の辻先生は、女性への治療に加えて、男性の精子の質を高めることで、妊娠のチャンスはぐんと高まるはずだと指摘されます。
そもそも、男性不妊を専門とするのは、泌尿器科医であるということも、まだまだ、十分には知られていないようです。
卵子の質を左右する最大の要因は年齢ですが、精子のほうは、年齢よりも、活性酸素などのライフスタイル面の影響をより強く受けるものです。
つまり、精子のほうが、卵子よりも"やりよう"があるという側面があるわけです。
ふたりで楽しみながら妊娠しやすいカラダづくりということ
精子の受精、妊娠させる能力は、精液検査の結果だけでは計れないことが、これまでのいくつかの研究で明らかになっています。つまり、妊娠を目指すうえで、精液検査の数値に問題ないからといって、女性への対策だけで十分であるとは言い切れないわけです。
女性が主で、男性が従ではなく、女性が主体で、男性が協力するというものでもありません。
質のよい卵子と精子が出会い、新しい健全な生命が育まれるように、ふたりで、お互いを思いやり、楽しみながら、妊娠しやすいカラダづくりに取り組みたいものです。