ドクターにインタビュー

vol.12

【1】妊娠前の栄養状態が赤ちゃんの発育に及ぼす影響とは?

福岡 秀興 先生(早稲田大学総合研究機構研究院教授)

福岡 秀興

【1】妊娠前の栄養状態が赤ちゃんの発育に及ぼす影響とは?

細川)
福岡先生は、妊娠を望む女性のやせ傾向に警鐘を鳴らしていらっしゃいますが、その理由を教えてください。
福岡先生)
現在の日本では、妊娠する可能性のある年齢の女性の4~5人に1人がやせています。食生活の乱れで栄養が偏ったり、ダイエットで食事を抜く人も少なくありません。そのため、必要な栄養が十分に摂れておらず、妊娠のための体づくりができていなかったり、妊娠しても少ない栄養で赤ちゃんが発育していくという事態になっているのです。
細川)
やせた状態で妊娠すると、どういう問題が起こるのでしょうか?
福岡先生)
まず、妊婦さんが栄養不足になると、赤ちゃんがおなかの中で十分に成長できなくて、小さく生まれてきます。生まれたときの体重が2500グラム未満の赤ちゃんを「低出生体重児」といいますが、日本ではその割合が1980年には5.2%、20年後の2000年には8.6%、2006年には9.6%と増加して、いまでは10人に1人が低出生体重児です。また、母体が高年齢だと出生体重が小さくなる傾向がありますので、近年の晩婚化、晩産化もこれに影響している可能性があります。
細川)
母体への影響は?
福岡先生)
やせた状態での妊娠は、早産や切迫早産を引き起こしやすいことがわかっています。また、低出生体重児と正常体重児では、低出生体重児のほうが帝王切開の確率が2倍高くなっています。
細川)
赤ちゃんとお母さん、両方にとってリスクが高まる、ということですね。
福岡先生)
それだけではありません。「生活習慣病(成人病)胎児期発症起源説」といって、母体の栄養不足によって、おなかの赤ちゃんが生活習慣病の素因を持って生まれるリスクがあることがわかってきました。この仕組みは、栄養不足の状態が受精時に近ければ近いほど、世代を超えて受け継がれる可能性があります。
細川)
妊娠前から必要な栄養をちゃんと摂る食生活をしていないと、短期的・長期的にさまざまなリスクを抱えることになるのですね。

ドクターに訊く

ドクターにインタビュー