生活習慣の改善について考える

2008年01月12日

妊娠するにふさわしい健康な身体を目指して、生活習慣を改善しようと、意欲が高まっても、現実には、悪い健康習慣は、簡単に身についても、よい健康習慣は、なかなか、長続きしないというのが、世の常です。

そこで、スムーズ、そして、効率的に、生活習慣を改善するには、何をどうすればよいのか、考えてみることにしました。

まずは、モチベーションを高める意味からも、生活習慣が、いかに妊娠する力に影響するのかについて、みてみることにしましょう。

★生活習慣と妊娠する力の関係は?

イギリスの大学に併設する病院で、2112人の妊娠女性に、本人とパートナーの生活習慣と、妊娠するまでに要した期間を調査した結果が、報告されています(※1)。

パートナーの男性については、1日15本の喫煙習慣と1週間に20ユニット以上の飲酒、年齢45歳以上、本人(女性)については、1日15本以上の喫煙習慣と1日7杯以上のカフェイン飲料、体重70kg以上、そして、年齢が35歳以上、これら7つの因子にまったくあてはまらないカップルは、1年以内に妊娠する確率は83.3%、2つの因子をみたすカップルでは61.5%に、そして、4つ以上になると38.4%まで低下したとのこと。

また、4つ以上の因子をみたすカップルは、因子がゼロのカップルに比べて、妊娠するまでに7倍の期間かかったと言います。

とにかく、授かるにふさわしい身体をつくるべく、健康によい生活習慣を心がけることがとても大切なことが、よく分かります。

★"精神論"だけでは戦えない

さて、いったん習慣化したライフスタイルを改めるのは、そして、新たなライフスタイルを習慣化するのは、なかなかに大変なことです。そのことについて、私たちは"私は意思が弱いので・・・"と、単なる精神論で片付けてしまいがちです。

ところが、バランスのよい食習慣にしろ、運動習慣や早寝早起きにしろ、わざわざ頑張って取り組まなくても、すぐに、何か困るというわけではありませんし、かといって、すぐに効果が実感できるわけでもありません。

さらには、それらの行動は、いろいろなモノやサービスの行き届いた、便利で快適な現代生活に逆行する行動であり、行動を起こさないことへのさまざまな"誘惑"は、ますます、巧妙に、仕組まれています。

単に"決意する"だけでは、生活スタイルを変えて、習慣化するには、まったく不十分だということです。つまりは、精神論だけで戦える相手ではないということです。変えようとする、習慣という行動そのものを、理解する必要がありそうです。

★習慣化とは"快感に支配された行動"

そもそも、習慣は、どういうものなのでしょう、そして、なぜ、やめられなくなってしまうのでしょうか?

まず、習慣になるきっかけは、ある行動の結果、その人にとっての"良いこと"が起こるからでしょうね。"良いこと"とは、例えば、何かが手に入ったり、得をしたり、また、ほめられたり、認められたりすることで、快感に感じる(ドーパミンの放出)ということだろうと思います。そして、そのことが、再度、同じ行動を起こさせ、また、"良いこと"が起こる、このことが繰り返される度に、心や身体に、定着していくのでしょう。つまり、自分の行動が、自分の頭(意志)ではなく、結果として起こりうる"良いこと"に、
支配されるようになっていくということではないでしょうか。言ってみれば、曲芸の後に"餌"を与えられる動物が、"餌"のために曲芸をするようになるのと同じことです。

結局は、"分かっちゃいるけど"止められなくなってしまうというわけです。私たち、人間にはこのようなメカニズムが備わっているようです。ですから、生活習慣を変えるには、自分の行動が、何に支配されているのかを客観視する必要があります。

苦労せずに生活習慣を改善する方法を考える

それでは、具体的な改善法をまとめてみましょう。生活習慣を変えるということは、これまでの"支配から脱却"です。

1)やりやすいもの、やりやすいことからはじめる。

支配する力は、なかなかに強力です。ですから、いきなり、断ち切るのは無理があります。徐々に、取りくみやすいものから、スタートするに越したことはありません。

例えば、まったく運動習慣のない状態から、1日1万歩こうとする場合を考えてみましょう。身体が楽をするということに支配されていますね。いきなり、早起きして、1万歩のウォーキングから初めてしまうのは、最初から三日坊主が確定しているようなものです。

そうではなくて、これまでの生活パターンを分析し、もしも、通勤などで歩いているのであれば、その距離を、徐々に、長くしてみるとか、交通機関を使っているのを一部使わずに歩いてみるとかです。

2)君子危うきに近寄らず

習慣行動は、"刺激"に誘発される場合が多いようです。ですから、極力、"刺激"を受けないように工夫します。

例えば、スナック菓子を食べる習慣を断ち切りたい場合、家にスナック菓子を置かない、また、スーパーやお店でスナック菓子売り場に近づかないようにします。もちろん、いきなりではなく、徐々に、実行することが肝心ですが。

3)考え方を変えてみる

これまでは、行動を変えることでしたが、今度は、考え方を変えることで行動を変えてみるというもの。生活習慣を改善することのメリットとデメリットを、改めて、よく考えてみます。

そして、そのことで、ぼんやりと想像していた以上に、メリットが大きく、デメリットが小さいことが分かるはずです。そもそも、デメリットが大きくて、メリットが小さいものであれば、変える必要なんてない習慣なのです。これは、動物にはできないことですね。

4)改善したい習慣が身についている人に近づく

行動を変えることにある程度の工夫が必要な一番の理由は、その結果、得られるメリットをすぐに実感できないからです。であれば、既に、そのメリットを実感している人に近づき、その人のマネをするということです。大きな刺激を受けることは間違いありません。自分の力だけでなく、仲間の力を得ることができれば、習慣を改善すること、そのものを楽しめるようになるでしょう。

いかがでしょうか?

結局、メリットの大きいことをやるわけですから、初めだけは、いろいろな工夫によって、継続しやすくすれば、そのうち、メリットを実感できるようになるはずです。そうなれば、しめたものです。その快感が、次の行動を促し、そして、支配するようになるからです。そうです、習慣化するということですね。

つまり、悪い習慣から、良い習慣にチェンジすることに成功したのです。

プラスの習慣とマイナスの習慣の違いは、長い目でみれば、とてつもなく大きな結果を、もたらしてくれるに違いありません。

[文献]

※1)Negative lifestyle is associated with a significant reduction in fecundity
(Fertility and Sterility Volume 81 Issue 2 P.384)