運動は脳の機能を最善にする唯一にして最強の手段

ライフスタイル

脳を鍛えるには運動しかない!

著者:ジョンJ・レイティ
出版社:NHK出版
価格:2,268円
発売日:2009年3月

運動と言えば、心肺機能や筋力を高めたりといった「体への効果」を思いがちですが、筆者は運動の体への効果は副次的なものに過ぎない、むしろ、脳にもたらす効果のほうが体への効果よりはるかに重要で、魅力的であると言います。この本は運動が脳をベストな状態にするということを、精神論や経験則ではなく、最新の研究結果をもとに説明されています。目から大きなウロコが落ち、体を動かしたくてたまらなくなります。

まさに、脳を鍛えるには運動しかない

運動について、それまで抱いていたイメージ、運動とは?について、それまで理解していた意味、すべてが完璧に上書きされます。もちろん、運動をすれば頭がスッキリするなと感じてはいましたが、ここに書かれているほどだとは思ってもいませんでした。

筆者のジョン・レイティはハーバード大学医学部臨床精神医学准教授であり、開業医でもあります。まさに、研究者として臨床家として、医学的生理学的な観点から運動が脳にもたらす効果を説明してくれています。

冒頭で紹介されているあるアメリカの高校で「0時限」として授業前に運動させたところ、成績が州のトップクラスに上がったというのは有名な話ですが、運動が脳細胞を育て、学力を向上させ、運動がストレス耐性を高め、ストレスに強くし、運動が抗うつ作用をもたらし、不安を軽減し、気分をよくし、運動が脳内神経伝達物質を分泌し、集中力やセルフコントロール力を高め、さらには、ホルモンバランスを整え、脳の加齢を遅らせ、、、、脳を鍛えるというのです。

そのメカニズムを強引に説明してしまうと、私たちの脳の中ではさまざまな信号がメッセンジャー(神経伝達物質)が神経回路を通して、無数にやりとりされることで活動しているそうですが、運動をすることで心臓から血液がさかんに送り出されることで、つくられるべき神経伝達物質がつくられるようになり、その通り道になる神経もつくられ、充実することで、脳のすべての機能のポテンシャルが高まる、そういうことのようです。

脳や脳の働きと聞けば、とても複雑で、その働きをよくしたり、改善するのはとても難しいという印象がありますが、意外にシンプルなのですね。

要は、人間は、そもそも、身体を十分に動かすことで、すべての働きが正常になるようにできていると。もしも、人間の「取り扱い説明書」があるとすれば、冒頭に「身体を動かさないと機能が低下するリスクが高まる」と書かれることでしょう。

妊娠、出産は脳の指令によって進むもの

妊娠しやすいカラダづくりのBOOK GUIDEと紹介しようと思ったのは、また、そもそも論ですが、妊娠すること、妊娠させること、すなわち、生殖機能は人間に備わった働きは、脳による正常な指令がなければうまくいきません。そのため、運動によって、脳を鍛え、そして、それに応じる体の状態をも、運動によって整えることで、妊娠する力の「根っこ」を強くすることになると直感的に思ったからです。

さらに、不妊治療を続けていると、意識するしないにかかわらず、ストレスを感じることになります。場合によってはうつっぽくなることもあるかもしれません。

そんなストレスや気分も、運動によってうまくコントロールできようになるとなれば、強力なサポートになります。

続くように計画を立てることがポイント

現代社会は、歴史上、最も身体を動かす必要がない仕組みが出来上がっています。そのため、自分で運動しようとしなければ、運動不足になってしまい、「身体や心の機能が低下するリスクが高まる」ような、自らを不適切な取り扱いをしてしまうことになります。

また、運動をはじめてみても、途中で続かなくなることがよくあります。

そのため、無理なく続けられるような計画を立てることが最大のポイントになってきます。

実際に脳を鍛えるのに有効な運動の種類や頻度、強度について、続けられるような計画の立て方についても、本書に書かれています。

最後に運動もやり過ぎはよくない、そして、いやいややっても効果は上がらない、という大切なことも指摘されています。

(推薦者: 細川忠宏)