50歳未満の日本人女性の22.3%が貧血で、そのうちの25%は重度の貧血、さらに、日本の妊婦の30-40%は貧血で、先進国の平均の18%を大きく上回っているというデータを示されれば、「貧血大国」というショッキングなタイトルも、決して、大袈裟なものではないことがわかります。貧血の主な原因は「鉄不足」です。ところが、国の取り組みや30代、40代女性の食生活をみていると、この状況は悪化しこそすれ、改善されるとは、到底、思えません。であれば、これから妊娠、出産に臨むカップルは自分たちでどうにかするしかありません。まずは、この本を読むことから始めるべきです。
妊娠してからでは遅すぎる
鉄は全身の細胞に酸素を運搬するのに不可欠なミネラルです。そのため、妊娠すれば、母体だけでなく、胎児にも酸素を運ばなければならなくなるため、鉄の必要量は跳ね上がります。
この本の中でも引用されているハーバード大学による研究によると、妊娠初期から中期にかけて貧血であった妊婦の子どもは低出生体重児のリスクが1.29倍、早産リスクは1.21倍も上昇するとのこと。
そのため鉄を補充しなければならないわけですが、実際に鉄剤を服用してから貧血が改善されるまで1〜2ヶ月はかかります。そのため、通常、妊娠が判明する妊娠6週から飲み始めて、妊娠10週くらいまでかかるということになります。
ところが、妊娠10週と言えば、既に神経系や循環器系、呼吸器系、消化器系は形成されている頃です。
つまり、妊娠が判明してから鉄を補充し始めても「時、すでに遅し」なのです。
鉄剤服用のハードル
貧血の改善には鉄を補充するしかありません。
ところが、鉄剤には吐き気やむかつきなどの副作用が伴うことが多く、それを我慢したり、飲む量やタイミングを調節したりといったことが必要になり、鉄剤は途中で飲むのをやめてしまうということが少なくありません。
その場合は、胃腸に負担をかけず、荒らさないヘム鉄のサプリメントを利用するという選択肢がありますが、鉄欠乏の程度によってはたくさんの粒を飲む必要があるというデメリットもあります。
また、たとえ、ヘモグロビン値が正常に達したとしても、その時点で補充をやめてしまえば、すぐに欠乏してしうまう可能性が高くなります。
その後も補充を続けて、貯蔵鉄の目安になるフェリチンを測定し、貯蔵鉄が充足されたことを確かめる必要があります。
基本は食事
鉄を補充することのハードルは低くないゆえ、筆者は、「一にも二にも食事」ということで鉄欠乏貧血対策の基本は食事であることを強調しています。
第十二章の「何を食べ、どう気をつけるか」で、具体的な方法をアドバイスしてくれています。
結局、鉄が不足しないような食生活が根本的な貧血対策になるというわけです。
これから妊娠、出産に臨むカップルは貧血の恐さや鉄の重要性についての正しい知識を得て、妊娠前から鉄が不足しないように心がけることが大切だと思います。
この本はそのための最良の本です。
(推薦者: 細川忠宏)