この本をお勧めする理由を一言で言えば「自分でできるエビデンスに基づいたストレス対処法を教えてくれる」ことです。具体的には認知行動療法やマインドフルネス瞑想法です。アメリカ人の女性セラピストが書いた本の翻訳書で、日本不妊予防協会理事長の久保春海先生が監修されています。
認知行動療法とマインドフルネスに基づくテクニック
この本で紹介されている「マインド・ボディ・テクニック」は認知行動療法やマインドフルネスという心理療法に基づいています。いずれも耳慣れない言葉で、少々、とっつきにくい印象を持たれるかもしれませんがその世界では有名です。
認知行動療法は、その名前の通り、ストレスの原因になっているであろう行動パターンや思考パターンを見つけ出し、それを変えていこうとするものです。
また、マインドフルネスのほうも、最近、グーグルやアップルなどのアメリカの錚々たる企業が、社員のストレス対策のために取り入れたことで、一般的にも関心が高まっています。もともとは仏教の瞑想法を取り入れたもので、現実を余計な考えを差し挟まずに、そのまま認識しようというものです。
認知行動療法で行動や思考のくせを修正し、マインドフルネスで現実をありのまま認識するという、それぞれが補完的に働くというわけです。ですから、マインド・ボディ・テクニックは一時的な気晴らしや逃避ではありません。
自分の不安や感情のアップダウン、人間関係を、否定したり、評価したりせず、また、スルーせずに、積極的に見つめ、認識し直し、それらとうまくつきあっていくための科学的な方法論で、言ってみれば根治療法的です。
そして、なにより重要なことは、認知行動療法も、マインドフルネス瞑想法も、不妊治療患者を対象とした研究で、その効果が検証されていることです。
そもそも、不妊治療のストレスや苦しみは、赤ちゃんが授からないということ、そのものよりも、主には、治療がもたらす大きな期待と結果のギャップにあるように思います。
つまりは、ストレスの源は自分の中にあるわけです。
相手をこちらの都合にあわせてコントロール出来ない中で、それらへの理解を深め、こちらの認識や考え方、対処の仕方を変えていくことで、自分のコントロール感を高めていこうとするのがマインド・ボディ・テクニックのようです。
具体的に紹介されているのは、複式呼吸、イメージ法、認知行動療法、マインドフルネス、集中型の瞑想、ジャーナリング、からだとつながりからだをいたわる、夫婦関係を改善する、自分をいたわる、などです。
実際に、私たちの「ファティリティレッスン」の初期でこの方法の一部を実践し、多くの方々に喜んでいただいたことを経験しています。
(推薦者: 細川忠宏)