「不妊治療・その後」のストーリー(物語)

不妊治療について

不妊治療のやめどき

著者:松本亜樹子
出版社:WAVE出版
価格:1,480円
発売日:2015/12/28

「不妊治療のやめどきを自分で決められない」という「声」をいただくことが多くなって久しくなります。彼女たちは不妊治療ははじめることよりも、やめることのほうが難しいと、口を揃えて言います。そんな「やめどき」に悩むカップルは、もちろん、不妊治療について悩んだり、行き詰っているカップルにも、強力なサポートになる本だと、断言できます。

妊娠しなかったカップルの「その時」と「その後」

現在、日本で体外受精を受けている女性の年齢を考えると、妊娠して治療を終える女性は、むしろ、少数派で、妊娠しないまま治療を終える女性のほうが多数派のはずです。

ところが、「妊娠報告」はよく見かけますが、「終了報告」はあまり見かけません。

不妊治療に臨むカップルの誰しもが「妊娠しないまま治療を終える」可能性があるわけですから、「終了報告」、すなわち、「妊娠しなかったカップルは、その時、どんな思いで、どのように治療を終え、そして、その後、二人でどんな人生を歩んでいるのか」は、ある意味、「妊娠報告」よりも貴重な情報なのかもしれません。

そんな、「不妊治療・その後」のストーリー(物語)を届けてくれたのは、NPO法人Fineの理事長であり、妊活コーチとしても全国で活躍されている、松本亜樹子さんです。

松本さんが、Fineを立ち上げられたのは2004年とのこと。「妊娠しやすいカラダづくり」のサイトをスタートしたのも同じ頃なので、この10年で不妊治療を取り巻く環境が大きく変化したことを実感します。まだまだ、精神的、肉体的、経済的な負担が大きいとは思いますが、その気になれば正しい情報にアクセスできる手段やさまざまなサービスが増えました。そんなサポートが拡充したことは、松本さんたちの取り組みにおっているところが大きいと思います。

自分自身で答えを見つけるためのヒント

「やめどき」について最も悩ましいことは、誰にでもあてはまる「正解」がないからではないでしょうか。

松本さんも、第2章「治療のやめどきを意識したら ー 迷っているあなたへの9つのヒント」のはじめに次のように書かれています。

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この章では、「やめどき」が頭をかすめたり、考えてほしい9つのヒントをお伝えします。
私はお伝えするのは、答えではありません。
なぜなら、私はそれをもっていないからです。
答えは、「あなた自身」がもっています。むしろ、あなたしかもっていません。
もしも今「もっていない」と思うなら、それは見えていないだけでしょう。
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私たちは、答えを、ついつい、外に求めがちです。でも、やっぱり、自分の中にしかないのですね。

自分にとっての正解を引き出すことができるようにとの松本さんも思いも伝わってきます。私でさえ、響き、刺さりました。当事者でも、まして、女性でさえない、私にでも、です。すべてのカップルが読むべき、くらいに思わせられる内容です。

そして、第3章は「不妊治療その後の物語 ー 16人の体験談」、第4章は「不妊治療のやめどき ー 専門家からのメッセージ」です。

不妊治療経験が人生を豊かにする

16人の体験談を読ませてもらって感じたのは、不妊治療経験というのは人生を豊かにしてくれるところがあるのだということです。

考えてみれば、生きていると自分の通りにならないことだらけ、です。でも、よくよく考えてみると、すべてが思い通りになることがHappyな人生だとは言えません。

そういう意味では、この本からはパートナーと一緒にHappyをみつけられるようなヒントも得られるのかもしれません。

この本を読んで、自分たちも「ビジョンメイキング」をやらねば!と痛感した、結婚して何十年にもなる私でした。

(推薦者: 細川忠宏)