生殖技術は本当に日進月歩のようです。
先月も東京農大の教授らがマウスの卵子の遺伝子を操作し、精子なしで子供を誕生させて話題になっています。
ところが、今週の木曜日のニュースによると、アメリカのミシガン州立ウェイン大学の研究チームは、精子は卵子と受精する際に遺伝情報のDNAだけでなく、たんぱく質の合成にかかわるRNAも一緒に卵子の中に送り込んでいることを突き止めたようです。
これまでは、精子からは遺伝情報のみが卵子に渡されるものと考えられていたのですが、その他にも、受精卵の正常な発育を助けていることが、明らかになったのです。
受精卵が正常に育たないのは、卵子の質の低下のためであると考えるのが一般的です。
ところが、この研究結果が事実だとすれば、精子からちゃんとRNAが送り込まれていないためかも知れないことから、精子に問題がある可能性も出てきた訳です。
この研究チームは、既に、人間の精子を使った試験管内の受精実験を通じ、精子が卵子に運んだとみられる計6種類のメッセンジャーRNAを 特定しています。このメッセンジャーRNAは、設計図に当たるDNAの情報をコピーし、たんぱく質の合成につなげる働きがあるそうです。
この発見って、実はかなり意義深いと私は思っています。
普通は、卵子と精子がちゃんと出会えているのか、そして、受精卵がしっかりと成長しているのかなんて、女性のお腹の中で起こっていることで、誰も見て確認することなんて不可能でした。
ところが、体外受精が可能になって、まさに、"体外"で受精が行われ、受精卵が育っていく過程を観察することが出来るようになったことで、余計な女性の苦悩が増えていたように思うのです。
というのは、採卵後、媒精(卵子に精子を振りかけること)を経て、受精が確認出来ると、 受精卵のグレードがチェックされます。
最も質の良いグレード1から5段階評価です。
透明感があり、均等にきれいな形で分かれているのが良いとされています。
採卵した卵子が受精するかどうか、そして、受精できれば受精卵の質はどうか、これらが妊娠の成否にかかわってくる訳ですから、とても気になるところで、体外受精のプロセスにも一喜一憂があることは、経験された方はよくお分かりだと思います。
そして、この受精卵の質は、これまでは 全て女性の卵子の質によるものと考えられていましたから、ここで相当なプレッシャーが女性だけにかかっていた訳です。
これまで、採卵出来ても分割しない、そして、着床出来ないのは、 私の卵子の質が低いから・・・、先生も「なんでかな~、卵子の質が良くないね~」なんて、平気でおっしゃる。
私たちは、そんな悩みを持つ、 数多くの女性からメールを頂いてきました。
そんなところにこのニュースです。
決して、女性の卵子のせいばかりでもないようです。
だからどうなんだ、と言われれば、その通りです。
ましてや、その治療法が確立された訳でもありません。
ただただ、二人の共同作業だという事実を知って欲しいのです。