編集長コラム

細川 忠宏

妊娠しやすいカラダづくりの落とし穴

2004年07月03日

6月27日から6月30日まで、ドイツのベルリンでヨーロッパ生殖医療学会が開催されていて、その学術会議にて、さまざまな研究報告が発表されています。

その中で、携帯電話の電磁波が男性の精子の数や運動率に悪影響を及すので、携帯電話を頻繁に使う男性は要注意、なんていう衝撃的な発表がありました。

日本でも6月27日付けで時事通信が報道していますので、ご存知の方も多いかも知れません。
その見出しは、「携帯電話は不妊の原因に?=電磁波が精子減らす―英紙」 というものです。

ところが、同じニュースが、アメリカのCNNの見出しでは、「携帯電話の電磁波の精子数への影響は却下、他の要因を考慮に入れず」 となります。

同じニュースでもどこに目をつけて報道するかによって、こうも違うものなんですね。
片や、携帯電話の電磁波が精子数を減らすのではという疑惑を、片や、研究結果のあいまいさを、それぞれ言わんとしています。

ところが、このニュースを受け取る側の私たちにとっての最大の関心事は、「では、明日から、いや今日から携帯電話をどう扱えばいいのか」でしょう。

いまや、携帯電話をもってて当たり前、持ちたくなくとも持たないと仕事に差し障るような時代です。
精子数云々に心当たりのある男性にとってはそこが最も気になるところです。

どうなんでしょうか?

環境ホルモンも同じようなことが言えます。
この手のことは、本当のところはどんな調査をしても、断定は出来ないのでしょう。

なぜなら、最後のところは、人体実験をするしかないからです。

ちょっと話しは飛躍するかも知れませんが、電磁波にしろ、 環境ホルモンにしろ、現代には、これまで人間の歴史にはなかった 「不自然なもの」が氾濫していて、それらが、ことごとく、私たちの生殖力を攻撃しているようです。

食についても同様です。
味付け、香りや風味、見た目の色から長持ちさせることまで、化学物質の力を借りています。

今や私たちの生活のすみずみに至るまで、カラダに悪そうなものだらけだといっても過言ではありません。

ところが、悪そうなんだけれどもとても役に立っている面、有用なところも決して無視できません。元々、内容の良し悪しは別として、必要があって生み出されたものです。
人体に悪いことばかりであれば、とっくに姿を消しているでしょう。

ですから、何がダメなのかを気にしだして、物事の一面のみを騒ぎ立て、それらを追求し、あぶり出して、 身の周りから排除してもキリがないし、そんなことは非現実的な面もあるのです。

どれがダメで、どれならば大丈夫なのか、そんな相談がメールでも頻繁に頂きます。

そして、私たちの答えはきまってこうです。
そんなこと気にしていたら生活できませんよ、です。
もっと言うと、生活自体が楽しくないですよね。

冷静に考えれば誰にでも直ぐに分かるのですが、妊娠しやすいカラダづくりのために、急に生活スタイルを優等生的にしようとするとそんな落とし穴に陥りがちです。

私たちは、なにも有害な物質を肯定している訳ではありません。
生活スタイルをこの機会に見直すことは大賛成で、妊娠、出産以後も継続して頂きたいと強く、強く思うのですが、大切なことは、人体に悪い(かも知れない)ものを排除することではなく、悪いものに影響されないカラダの状態をキープすることではないか、最近はそんな風にも思っています。