編集長コラム

細川 忠宏

不妊治療に入る前に知っておきたいこと

2005年07月19日

Q&Aには、 たくさんのご相談が寄せられています。

不妊の問題は、とっても個別性が高いものですから、単なる知識をたくさん知っているだけでは、 混乱して、悩みが深くなるばかりです。
Q&Aでは、単なる知識ではなしに、どのような考え方をすべきか、という観点を大切にしています。

ところで、たくさんのご相談内容に接していて、 「?」と、思うとことがよくあります。

そこで、 不妊治療に入る前の皆さんに知っておいて頂きたいことをテーマに、お話させて頂きたいと思います。

まずは、不妊治療を始めるということは、それまでに、色々と、不安になり、悩んで、迷って、そして、それなりに勇気を振り絞って病院を訪ねるわけですから、病院に行って、医師に診てもらいさえすれば、なんとかなるのでは、なんていうケースが、少なくないようです。

【その1】

カラダの仕組みと妊娠へのプロセスは理解しておくこと。

医者まかせにしない、ということが大切なのですが、そのためには、医者が何のことを言っているのか、理解出来なければ、お話になりません。

"医者まかせ"にしてしまうのは、 "よく分からない"ためにそうなってしまうようです。
そうならないためにも、心の準備とともに、 頭の準備も必要です。
生殖器官の名称やそれぞれの役割なのか、妊娠が成立するのはどういう仕組みになっているのか、そんな基本的な知識をおさえておくことが大切です。

先生の言っていることが、分かりにくいために、 治療のスタートでつまづいてしまって、そのことが、後々まで影響してしまうことが、 意外にも少なくありません。

【その2】

治療を始めれば、すぐに妊娠する、わけではない。

病院にいけば、なんとかなると無意識にも思ってしまうのは人情ですね。
誰だって、そんな期待をもって、頑張って通う訳ですから。

ところが、不妊治療の場合は、結果が出るまでに、ある程度の期間はどうしてもかかってしまう、そんな、特有の"事情"があります。

それは、大袈裟に言うと、不妊治療の宿命的な事情によるものです。

その事情とは、女性には、生殖サイクルがあるということです。
検査から始まるのが普通ですが、他の病気のように、通院を始めたその日に、一通りの検査を済ませてしまうという訳にはいきません。

それぞれの検査には、 検査するに相応しい、生殖サイクル上のタイミングがあるからです。
この制約があるために、一通りの検査を済ませるだけでも、最低、2ヶ月はかかる計算になります。

もう一つの特有の事情とは、治療の進め方にあります。

それは、治療を始めるにあたって、それぞれのカップルにとって、どんな治療が、妊娠するためには最も有効な治療なのか、分からないケースが多い、ということです。

では、どうするか、取りあえずは、 女性のカラダへの負担が軽い治療から始めて、結果が出なければ、次第に、強い治療に移行していきます。

これが、ステップアップ方式の不妊治療です。

さらに、さらに、です。

仮に、妊娠を妨げていた原因がつかめたとしましょう。

そして、それに対する治療を施したとしても、必ず、妊娠出来るとは限らないのです!

何の問題のないカップルでも、1周期当たりの妊娠率は20数パーセントと言われています。
治療が適切でも、次に確率の問題があるがあために、何回か、同じ治療を繰り返してみなければならないわけです。

いかがでしょうか?

他の病気や怪我で言うところの全治○○ヶ月、なんて、不妊治療では、ちょっと、言えないわけです。

このように、不妊治療って、 宿命的に長丁場にならざるを得ないものなのです。

以上、不妊値治療に入る前に知っておきたいことを、2つのポイントにまとめてみました。