編集長コラム

細川 忠宏

環境中の有害物質について考える

2005年10月22日

これは、妊娠にとっては、よいのか悪いのか?

不妊の原因が不明であったり、診断されている原因がちょっとあやふやだったりすると、ついつい、無意識に、「犯人探し」をしてしまい、日々の生活が、神経質になることはよくよくあるものです。

私たちのところへも、読者の方から、妊娠を妨げる可能性のある有害な物質についての質問や相談をよく頂きます。

今週の最新ニュースでは、妊娠中に食べた魚に含まれる水銀が胎児の脳に悪い影響を及すこと、また、PCBが男性の精子の遺伝子を損傷することについて、それぞれ報道されています。

いずれも"環境中の有害な物質"のリスクについての記事なのですが、とても大切なことを教えてくれています。

妊娠中に魚を食べることについて

ハーバード大学医学部の調査で分かったことは次の通りです。 http://www.akanbou.com/news/news.2005101301.html
妊娠中に魚をたくさん食べた女性の子供ほど知能テストの成績が良いものの、妊娠中に魚をたくさん食べた女性でも、髪の毛で測定した水銀量が多い母親の子供は、テストの成績が悪かったというのです。

魚には、子供の脳の発育にかかわる"オメガ3脂肪酸"が、豊富に含まれているのだけれども、逆に悪い影響を及す"水銀"も含まれていて、魚の種類によっては子供の脳に悪影響を及す場合もあるということです。

ですから、妊娠中は、オメガ3脂肪酸を多く含み、含まれる水銀が少ない魚を選んで、積極的に食べるのがよいということになります。

注意を要する魚としては、今年の8月に厚生労働省はクロマグロなどを挙げています。

魚には脳の発育によいものと悪いものが同居しているんですね。有害な水銀も"程度の問題"だということです。

PCBが男性の生殖能力に及す影響は?

有害物質として悪名高いPCBもまた、"程度の問題"であるようです。http://www.akanbou.com/news/news.2005101401.html
スウェーデンの調査では、 調査対象となったほとんどのヨーロッパの男性には、PCBによって精子に遺伝子の損傷がみられたというのです。

ただし、その損傷レベルは不妊になるほどではなく、他の不妊要因がある場合には、相乗作用によって男性不妊の引き金になりうるということでした。

もはや避けることは不可能

これまで、「買ってはいけない~」とか、「食べるな危険」といった本が話題になったことがあります。

この類の本を読むと、ほとんどの食品は汚染されていて、有害な物質を避けようと思うと、現代の社会から隠とんした仙人のような生活をするしかなく、全く、"非"現実的な話しです。

野菜や果物、お米は有機で、遺伝子組み換えの食品は避けて、洗剤やシャンプー、歯磨き粉、化粧品は、、、、 なんてやってみても、せいぜいが自己満足というか、 個人の信仰にしか過ぎないのかもしれません。

誤解しないで頂きたいのは、そのように、有害な物質を避けようとこだわることは、無駄であると言っているわけではありません。

私自身も、色々、こだわってやっている口です。

もはや、現代の社会では、どんなに努力しても、有害であるかもしれない化学物質を完全に避けることは、不可能ではないでしょうか、と言いたいのです。

これまで、人間が合成した化学物質は、いったい、どれくらいあるのかご存知でしょうか?

なんと、約85,000もの種類で、かつ、毎年、1,000~2,000のペースで増え続けているのです。

お陰で便利で快適な生活が実現出来たわけで、その恩恵は、現代の社会で暮らす人間が全員が享受しています。

有害とされる化学物質は、今後もどんどん増えていき、後戻り出来そうにありません。

そうです、人間は、とうの昔にルビコン川を渡ってしまっているのです。

卵胞液や精液、そして、胎児を包む羊水にまで、環境ホルモンとして悪名高いダイオキシンやビスフェノールAといった、化学物質が検出されています。
胎児、いや、卵子や精子の時点から、私たちはこれらの化学物質にさらされているのですよ!

これを汚染されているとみますか?

これも"程度の問題"なのです。

化学物質とうまくやっていくことが大切

いかがでしょうか?

何を摂取して、何を摂取してはいけないというような、もはや、そんな問題ではありません。
生活の隅々にまで化学物質が存在していて、有害かどうかは、"程度の問題"なのです。
実際のところ、専門家は日夜、さまざまな化学物質の毒性を調査、研究し、行政は、必要とあらば、規制してくれてはいます。

ただし、全ての有害な化学物質を無くそうとしているわけではありません。

たとえ、有害な物質でも、影響のないレベルであれば、使おうという考え方です。

まさに、ベネフィット(利益)とリスクを天秤にかけているのです。

そうしなければ、"さまざまな業界や産業"は、立ち行かなくなってしまいます。

本当の問題は、その程度には個人差があるということなのかもしれません。
ほとんどの人には特に影響はみられなかったけれども、ある人には、有害であったという個人差です。

ですから、有害物質を避ける努力もさることながら、身体の排泄能力や闘う力を高めることこそが大切であるように思うのです。

有害物質は、なにも、人間が合成した化学物質だけではなく、太古の昔から自然界にも無数に存在しているわけですから、それらを排泄したり、闘う力は、人間にとっては当たり前な能力なはずです。

人間に備わった浄化システムが健全に機能すること

今、デトックスブームです。

デトックスがブームになるのも、背景として、 有害な物質にまみれているという感覚があるのでしょうか。

ただし、今のデトックスブームを、冷静に眺めていると、どうしても、何かに頼って、毒素を出すというような、そんな他力本願的な風潮がどうも気になります。

デトックス食品とかデトックスサプリメントとか、です。

何か、違うんでないかい、という感じがするのは、私たちだけでしょうか?

アメリカの有名なアンドルー・ワイル博士は、その著書「癒す心、治る力」の10章「有害な物質から身を守る」で、環境汚染有害物質は真の脅威であるから、その防衛手段を身につけておく必要があるとして、

「不要な物質を排除するからだの能力は、泌尿器系・消化器系・呼吸器系・皮膚という、4つのシステムの健全な機能に依存している。からだは、尿・大便・呼気・汗というかたちで廃棄物を排出している。肝臓はたいがいの異物を処理し、可能なかぎり解毒し、からだが4つの経路のいずれかで排出できるように、より単純な化合物に変えている。そうした排出機能を維持するためには、4つのシステムが整然と働いていなければならない。そのためには、きれいな水をたくさんのんで腎臓の尿の排出を助け、食物繊維をたくさん食べて腸の調子をととのえ、呼吸器系を正しく使い、有酸素な運動をしたり、 (風呂等で)熱をあびたりして汗をかく必要がある。」

もちろん、有害な物質の摂取や接触を出来るだけ避けることが、大切だとしていることは言うまでもありませんが、それと同時にカラダの浄化システムの機能を高めることを、忘れてはなりません。

まさに、サバイバル、自分の身は、自分で守らねばなりません。