編集長コラム

細川 忠宏

不妊の原因は相対的なもの

2007年01月28日

最新ニュースでもご紹介していますが、1294の体外受精の治療周期を対象にして、胚移植時の子宮内膜の厚さと妊娠率の関係を調査したアメリカの研究報告が、生殖医療専門誌に掲載されています。
http://www.akanbou.com/news/news.2007011701.html

それによりますと、妊娠に至った周期の子宮内膜の厚さの平均は11.9mm、妊娠しなかった周期のそれは11.3mmで、子宮内膜の厚さが厚いほど妊娠に至る確率は高かったとのこと。
厚さからみた妊娠率はどうかと言いますと、8mm未満の妊娠率が53.1%、8mm以上16mm以下の妊娠率が67.6%であったと報告されいます。

やはり、胚移植時の子宮内膜の厚さが厚いほど妊娠率も高くなるようです。

一般に、着床期の子宮内膜は9~11mmになるのが正常とされています。

ただ、見逃してはならないのは、子宮内膜の厚さが正常範囲で、かつ、厚いに越したことはないのだけれども、だからといって、正常範囲外でも妊娠率はゼロではないということです。

日々、不妊の悩みに接していると、ある検査の結果が正常値でなかったことが、心に重くのしかかっていることが多いように思います。

子宮内膜の厚さだけではありません。

ホルモン検査の数値しかり、月経サイクルしかり、男性の精子の数や運動率しかり、です。

それらの検査結果には、全て、"正常値"が決められています。

ところが、実際的には、"正常値"、要するに"正常"か"異常"かというよりも、"ボリュームゾーン"、要するに"多い"か"少ない"かという方が、ニュアンス的には、より正確なように思うのです。

"絶対的"な不妊とされるのは、無排卵や両側の卵管の完全な閉塞、そして、精液中に精子が1個もいないことだけです。

不妊の基準は、決して、"絶対的"なものではなくて、あくまで、"相対的"なものであるということです。

それだけ、妊娠に至るプロセスには、さまざまな複数の要因がからみあっていて、それらの絶妙なバランスのうえに進行するということなのでしょう。

ちょっとした、見方の違いが、悩みや不安を不必要に大きくしていませんか?