編集長コラム

細川 忠宏

母なる大自然

2007年03月25日

アメリカの国立がん研究所(NCI)の研究員は、この25年間に世界各国で承認された1184種類の新薬の70%は、自然界の植物や動物から発見されたものであると専門誌に発表しています。
http://pubs.acs.org/cgi-bin/abstract.cgi/jnprdf/2007/70/i03/abs/np068054v.html

最先端の技術を駆使して開発されているイメージの強い医薬品ですが、まだまだ、人工的に化学合成されるものよりも、自然界に存在する未知の物質を探してくるほうが圧倒的に多いとは驚きです。

まさに、マザーネイチャー(母なる大自然)の力を思わざるを得ません。

昔から子どもは「授かる」ものといわれてきたのも、子どもの誕生には人知の及ばないところがあるということ、母なる大自然への畏れと感謝の気持ちの表れだったのでしょう。

頑張って通院しているのにもかかわらず、なかなか結果が出ないと、つい、自分を責めたり、医療への不満を感じたりするのは、妊娠するための努力を重ねれば重ねるほどに、「子どもをつくっている」という意識が芽生えてくることも、理由の1つとしてあるのかもしれません。

卵子と精子を体外で操作するような治療を受けるようになると、尚更のことでしょう。

ところが、よくよく考えてみると、最先端の生殖医療でさえ、介添えすることは出来ても、何もないところから、卵子や精子を造ることは、到底、不可能です。

私たち人間は、新しい生命の誕生に際して、細胞1つを造りだすことも出来ないのが現実なのです。

くれぐれも誤解しないでいただきたいのは、決して、生殖医療が無力だと言っているわけでもありませんし、不妊治療を否定しているわけでもありません。

とんでもないことです。

ただ、それぞれの役割を正しく知っておかないと、不必要な悩みをしょいこみかねないのではと言いたいだけです。

その役割とは。

未だ見ぬお子さんに遺伝子を提供し、誕生のきっかけをつくるのはお二人です。場合によっては、医療の力を借りるかもしれません。

そして、新しい生命を造るのは母なる大自然です。

母なる大自然に授かったお子さんを産むのは母親になる女性、あなたです。そして、生まれるのはあなたがたお二人のお子さんです。

いかがでしょうか?

お金と労力をかけているからには、プレッシャーを感じてしまうのは人情ではあるのですが、ちょっと、見方を変えるだけで、もしかしたら、今、感じている世界がガラッと変わるかもしれません。