編集長コラム

細川 忠宏

なかなか授からないことで感じるストレスとどうつきあう?

2008年05月18日

昨年までの気功教室でも、今年からのファーティリティレッスンでも、
http://www.akanbou.com/fertilelesson/top.html
スタート時のアンケートの回答をみると、"知りたい情報"や"身につけたいスキル"として、最も多いテーマは「ストレス対処法」です。

ストレスと一言で言ってもその内容や程度はさまざま

もしかしたら、自分たちは子どもを授かることができないかも・・・、

これは"夫婦間の一大事"です。

不妊原因がない、分からないということに漠然とした不安を感じること、どうしようもないことに対して自分や人間の無力さを思い知らされること、生理が来るたびに落ち込むこと、不妊治療を受けることで感じる心の痛み、不妊治療や検査を受けることや副作用で感じる体の痛み、治療にかかる費用について心配し、経済状況に不安を感じること、周囲の無理解、無意識からくる言葉や態度に心が傷つくこと、周囲の妊娠報告、子ども連れに嫉妬や焦燥を感じること、両方の親からの有言無言のプレッシャーを感じること、治療と仕事を両立することの困難さに直面すること、夫との意見や価値観の相違に直面すること、

これらは"日常的に頻繁に遭遇する出来事"です。

このように、なかなか授からないことで感じるストレスは、ストレスと一言で言ってもその内容や程度は、本当に、いろいろ、です。


発散して、解消しさえすれば、問題が解決するのでしょうか?

アメリカのカリフォルニア大学の研究チームの報告によりますと、体外受精を受けている女性の心の状態は治療成績を左右するとのこと。

例えば、治療の内容や手順について過度な心配をする女性、治療のために時間をとられることで、仕事に支障が出ることを過度に心配する女性は、採卵後の受精率が低くなり、治療にかかる費用について経済的な心配を過度にする女性は、出産にまで至る確率が低くなるというのです。

また、不妊治療を休んだり、やめた途端、自然に授かったという話しは、本当に、よく聞くものです。

医学的にはストレスが不妊の原因になるとは、どの教科書にも書かれていませんが、心の状態が妊娠する力に影響を及ぼすことは間違いなさそうです。

ところが、そんな大切なことなのにもかかわらず、なかなか授からないことで感じるさまざまな心の状態の変化を、単に"不妊のストレス"という、十把一絡な表現をされたり、そして、その対処法を、単に"発散して、解消しましょう"という、漠然とした方法論で片付けられているように思えてなりません。


強力な武器が使えるようになったからこそ・・・

なかなか授からないことで感じるストレスは、過去のどの時代よりも、現代のほうが、その内容は多彩で、その程度が大きいことは間違いありません。

なぜなら、現代は、高度な生殖補助医療を当たり前に使えるようになり、これまでのどの時代にもありえなかった情報化社会だからです。

ただただ、祈るしかなかった時代には諦めざるを得なかったことでも、強力なツールを使うことが叶うようになった現代、諦める必要がなくなったことは、選択肢が増えたことに喜び、感謝すべきことである反面、諦められなくなることのストレスが伴うリスクを、抱えてしまう状況をつくりだしました。

また、情報環境が飛躍的によくなった現代、事の良し悪しは別として、心を乱されてしまう情報に接するリスクを抱えるようになりました。

誤解しないでいただきたいのは、だからと言って、私たちは、昔のほうがよかったとか、また、最先端の生殖技術や情報ツールを否定しているわけでは、決してありません。

この時代に生きていることに感謝していますし、使える技術やツールは利用するべきであると思っています。

ただ、なかなか授からないことで感じるストレスは、それまでに、私たちが経験しなかった種類のものであること、そして、だからこそ、
無防備に痛感しているということです。

そこで、私たちがこれまで経験したことから、ストレスとうまく付き合うためのポイントを整理してみました。


なかなか授からないことで感じるストレスに対処するために


【自然体】自分の感情を受け入れ、抑制しない

なかなか授からないことによる悲しみや怒りを、否定したり、押し殺したりすることって、意外に少なくありません。

もしかしたら、感情を出すこと、怒りや妬みを抱くことは、単に"いけないこと"だと、無意識にも思っているからかもしれません。

でも大切なのはその"理由"だと思うのです。

自分たちの子どもが欲しいという願いを持つこと、これは、人間として、ごくごく、自然で、当たり前な気持ちです。このことは、誰であろうと、絶対に、批判したり、否定などできません。

であれば、なかなか授からないことで、悲しく思ったり、怒り、妬みが湧き起こってくる自分自身を、恥じたり、いけないと思ったり、ましてや、責めたりする必要は毛頭ないわけです。

涙があふれるのなら、思いっきり泣き、怒りや妬みがこみ上げるのなら、何かに(出来ればものに)八つ当たりしましょう!

【回避する】たまには自分をなくしてみる

所詮、私たち、人間がコントロールできるもの、私たちの思い通りの出来る"相手"ではありません。

私たちの事情や理屈とは関係ないところで物事が進むのであれば、もしかしたら、自分へのこだわりが、物事を見えにくくさせていることがあるのかもしれません。

たまには、自分を忘れ、なくすくらいに、遊びたいものです。踊るのもよし、お酒を飲むのもよし、歌うのもよい、です。

たまには、"すべてはなるようにしかならない"そんな考えに浸ってしまうことも大切です。

【向き合う】自分をみつめ、正しい知識や情報に接する

回避型は、いわば、逃避型で、対症療法的です。

お酒を飲んで発散する人も少なくありませんが、飲酒によるストレス発散効果は疑わしいとする専門家は多いようです。

例えば、東大の研究チームによりますと、嫌な出来事の後、お酒を飲んで忘れようとしても、逆に記憶が強く残ることになるかもしれないと報告しています。

また、体に負担をかけてしまうリスクもあったりします。

回避型は、一時的なものと心得ておくほうがよいかもしれません。ストレス発散や解消は、ほとんど、この類です。

やはり、向き合うことで、根本的な解決を目指すことが大切です。

そもそも、何に、どの程度のストレスを感じるかは、個人差が大きいものです。

つまり、ストレスは、受け止め方次第というところがあるということです。

であれば、ストレスに向き合うことで対処することが、言ってみれば、正攻法になるわけです。

そのためには、まずは、出来る限り、自分を客観視することです。

具体的には、自分の現在の状況を誰かに説明してみたり、日記などに書いてみるのがよいかもしれません。

まさに、自分のことを他人事のようにみるわけです。

そのことで、自分が不快に感じたり、怒りを覚えたりしている対象があらわになってくるはずです。もしかしたら、客観視することで、まさに、他人事、つまり、どうでもよいことに思えてくるかもしれません。
また、頓珍漢なことに、悩んでいることに気付き、問題や悩みの本質が見えてくるかもしれません。

なかなか授からないことで感じるストレスの本質的要因は、「不確実性」ではないでしょうか?

もしも、その不確実性を増幅するような、誤解や思い込み、思い違い、無知があるのであれば、正しい知識や情報に接することで、相当に、ストレスは軽減されるはずです。

【スキルをもつ】リラックス術をいくつかもっておく

心に余裕があるかないかで、感じるストレスの程度も随分と違ってくるものです。

リラックスすることは、心に多少の余裕をもることになり、予想したり、想定していなかった事態にも対処できる力が高くなります。

皆さんは、自分にあったリラックス法をもっていますか?実は、簡単に取り組めるリラックス術は少なくありません。

例えば、複式呼吸法や自律訓練法、筋弛緩法、また、気功、ヨガ、瞑想などです。

多少のトレーニングやちょっとしたコツが必要かもしれませんが、自分なりのリラクゼーション法を身につけておくことは、とてつもなく大切なことです。

【強くなる】人とのつながり、これに尽きる

ここまで書いてきたことは、ストレスに感じることに遭遇したとしても、そのことを一時的に回避したり、ものの見方や考え方、受け止め方を変えたりして、また、自分の心に余裕をもつことで、その影響を出来るだけ軽微なものにしましょうということです。

最後は、ずばり、ストレスに強い人になりましょうということです。

ストレスに強いとか、脆いとかって、確かにあるようです。

でも、ストレスに強くなるには、具体的にはどうすればよいのでしょうか?

多分、何らかの修行を通じて、精神力を高める云々ではないと思うのです。

私たちが、これまで経験したことから言えることは、ストレスに強くなるということは、その人自身の絶対的な精神力を鍛えて、強くなるというよりも、人との精神的な絆を深めることしかないと思うのです。

その人とは、まずは、パートナーなのですが、例えば、同じ悩みをもつ人とのつながりもとても大切です。それは、私たちが運営しているファーティリティレッスンで、つくづく、経験させてもらっていることです。人間って、人とのつながりによって、驚くほど強くなれるんですね。

NPO法人Fineの皆さんの活動も、
突き詰めれば、そういうことだと、私は思っています。

いかがでしたでしょうか?
何かのきっかけになれば嬉しいです。