編集長コラム

細川 忠宏

2種類の幸福感

2008年07月20日

幸福も不幸も一時的なもの?

「the Economic Journal」という専門誌に、数百人のドイツ人を対象に、自分の人生の満足度について、20年間に渡って追跡調査を実施した結果を実施した結果が発表されています。

結婚したり、子どもを授かるといった人生の大きな出来事に、人間は大きな喜びを感じるのだけれど、それは、一時的なもので、人生の幸福度はそんな出来事には影響されないというのです。

反対に、子どもがいないことや離婚するといった事も、悲しみは一時的なもので、同様に、ハッピーな人生かどうかとは無関係であることが分かったとのこと。

ちょっと、ショッキングな内容です。

結婚や子供が生まれるといった"出来事"で感じる幸福感は続いても2年、その後、幸福度合いは、元のレベルに戻るのだそうです。

そして、最も精神的に長く落ち込む"出来事"は失業で、だいたい、5年くらいは尾を引くとのこと。

改めて"人生の幸福"について、深く、考えさせられました。

誤解しないでいただきたいのは、だからといって、お子さんをなかなか授からないこと、また、授かることができないことは、たいしたことじゃないと思ったわけでは、決して、ありませんし、ましてや、授からなくてもいいじゃないかと言いたいわけでも、決して、ありません。

そうではなくて、いつ授かるのか、また、授かることが出来るのか出来ないのかは、ハッピーな人生かどうかとは、全く、関係がないということ、そして、人生で感じる幸福感には2種類ある、そう思ったのです。

2種類の幸福感

研究チームのリーダーは、象徴的なこととして、巨額の宝くじがあたった人は、意外にも、ほぼ全員、幸福な人生を全うしていないこと、反対に、不幸にも交通事故で下半身付随になっても、数年後には、事故に遭う前の幸福レベルに戻ることを挙げています。

つまり、人間には、"幸福感度サーモスタット"が備わっていて、嬉しい出来事や悲しい出来事に感化されたとしても、しばらくすると、それぞれの個人の幸福度合いのレベルに戻る、そんなメカニズムが働くようだと解説してくれています。

もし、この理論が正しければ、悲しみや辛さは、決して、一生涯続くことはない、それと同時に、人生で感じる喜びには2種類ある、ということになります。

1つは、テンポラリー(一時的)な喜びで、人生で遭遇するさまざまな出来事で感じる喜びです。

"出会いがしら"の幸福、不幸とよんでいいかもしれませんね。

そして、もう1つは、パーマネント(永遠)な喜びです。

これは、"テンポラリー"な、そして、"出会いがしら"の悲しみ、辛さを経験するなかで、徐々に、徐々に、"感じるココロ"が培われていくことによるものです。

"感じるココロ"は、少し、努力も必要かもしれません。

それは、自分のせいではない不幸なことがおこっても、逃げずに、正面から、真摯に受け入れる努力です。

他力か自力か

さらに、こんな見方もできるかもしれません。

テンポラリーな幸福は、たとえ、自分のチカラによるものに見えても、実際には、偶然が支配するところが大きいように思います。

それに対して、パーマネントな幸福感は、自分たちで獲得できるところが大きいように思うのです。

この研究報告に、なぜか、とても、とても、勇気づけられました。