編集長コラム

細川 忠宏

断食体験がおしえてくれること

2015年05月05日

今年の連休も、伊豆高原にある断食道場「やすらぎの里高原館」に滞在しています。毎年、恒例の「リセット」目的ですが、今年は、毎日、快晴で本当に気持ちのよい時間を過ごさせてもらっています。

断食道場と言っても、その名前から普通にイメージされる雰囲気とはずいぶん違います。サイトをご覧になるだけでもおわかりいただけるかと思います。

リセットというのは、ある意味、野生に帰るというか、野生を取り戻すというイメージです。

野生の動物は、食べたい時に、食べたいものを食べ、最高の健康状態を維持しているわけで、元気がなくなったときは、多分、遺伝子に刷り込まれているセルフケアで生命力を取り戻しているのではないかと思います。

カラダが、自分に必要なもの、自分にいいもの、自分を癒す方法を知っているということですよね。

それに素直に従うのが、最高の健康法であり、生き方になるというわけです。

ある意味、「エビデンスベイスド(科学的根拠に基づく)」とは対極です。

その、科学的な根拠に基づいた医学を用いて、さまざまな病を克服してきた人間が、健康のためにはなにを食べればいいのか、なにをやればいいのかについて、いざとなると、大いに迷ってしまっているのが現代ではないでしょうか?

いくら健康情報をあつめても、実践してみても、不安を解消できているようには見えないからです。

もちろん、「エビデンスベイスド」を否定するわけではありません。現代医学の恩恵は絶大で、それでしか解決できない問題は山ほどあります。

ただ、毎日、食べたいものを、食べたいだけ食べ、気落ちのよい毎日を過ごしたい、そう願うだけです。

そして、そのことが、本来の生殖能力を取り戻すことにもなると感じています。

そのためには、まずは、自分を信頼し、そして、自分の味覚を鋭敏(正常)にする必要があります。

そのことを教えてくれたのが、ここ、やすらぎの里での断食体験であり、滞在経験なのです。

昨日、「食のワーク」がありました。

そこでは、噛む実習として、玄米ご飯をひと口、100回噛んで食べるみるというものがありました。

ほぼ、丸2日間、水分しか口にしていない空腹の絶頂で、玄米ご飯を口にしてみるとどうでしょう。

びっくりするくらい、唾液が溢れてくるのです。

まさに、「本気で」、消化し、栄養素を吸収しようとしている自分のカラダの反応には驚くばかりです。

それはそうですよね。

玄米と言えば、命の源である「糖」を含んでいるわけですからね。

ベストセラーのタイトルにあった「炭水化物が人類を滅ぼす」なんてことはあり得ないなと、実感することが出来ます。

カラダやココロが「本気」になること。

それは、ある意味、野生が目覚めることでもあり、これまで、せっせと、仕入れてきた知識や情報がぶっ飛ぶ瞬間でもあります。

今、私の関心事の一つに、どうすれば、細胞内のミトコンドリアが増えたり、元気になったりするのだろうかということがあります。

私たちは、ミトコンドリアがつくってくれるエネルギーがあるから、動いたり、考えたり、喜んだり、愛したりすることができるようになっていて、まさに、生きるということのベースを支えてくれているからです。

また、女性が年齢をかさねると、妊娠率が急落し、流産率が上昇するのは、卵子の老化によるものとされていますが、その原因としてミトコンドリアの機能低下の関与を示唆する研究報告が、どんどん、なされています。

新しい命を授かるためのエネルギーをも、ミトコンドリアがつくってくれているというわけです。

実際に、老化した卵子のミトコンドリアを若い女性のそれと交換する「ミトコンドリア置換法」や老化した成熟卵子のミトコンドリアを自分の未成熟卵子のそれと交換する「AUGMEMENT療法」など、欧米ではビジネスも巻き込んで、どんどん、研究が進められています。

要するに、生殖医療の「卵子の老化」対策は、ミトコンドリアを交換してしまおうと、そういうことです。

そして、それなりの結果が出ていますから、近い将来、日本でも普及するようになるかもしれません。

その一方で、「自分の」ミトコンドリアを増やし、元気にするということを考えた場合、もちろん、エネルギー源になる栄養素を不足させないようにすることやミトコンドリアでエネルギーをつくる際に関与する補酵素やビタミン様物質を補充することなどが、場合によっては有効かもしれません。

ただ、実は一番大切なのは、「ミトコンドリアが本気になること」ではないかと思うのです。

それは、ミトコンドリアが、「エネルギーを増産せなあかんな!」ということを、カラダにわからせるということです。

つまり、必要だろうと考えられるものを補充するのではなく、ミトコンドリアが「その気」になるような状態をつくるということです。

それは、空腹を感じること、ウォーキングのようなゆっくりとした有酸素運動を習慣化するという、単純なことです。

勘違いしないでいただきたいのは、空腹を感じることとは食べ過ぎないことであり、決して、食べないことではありません。

考えてみれば、消化器官が、いつも、「その気」になっていれば、食べ物の消化が進み、栄養素がしっかり吸収されるようになります。

それだけではありません。

免疫バランスが整い、食べ過ぎないようになり、脳細胞が活性化し、歯が丈夫になり、自律神経が安定し、ストレスに強くなり、さらには、あごが引き締まり、顔までも引き締まるというのです。

ミトコンドリアが本気になれば、このような良循環のスパイラルがどんどん回っていくはずです。

そもそも、受精卵が自ら生きようとしなければ、すなわち、「本気」にならなければ、いくら、介添えをして、「補助」しても、新しい生命は誕生に至りません。

カラダやココロが本気になること、それは、まさに、私たちに備わっている働きを最大限にするということでしょう。

そして、それは本当の心地よさや快、そして、自然さを伴うものなのですね。

母なる地球に感謝するばかりです。