リプロダクションクリニック大阪院長の松林先生は、ご自身のブログで「不妊クリニック通院前にして欲しいこと」として、次のように書かれています。
そのまま、転載します。
「子供が欲しいけどなかなかできない」という方に是非チャレンジして欲しいことがあります。それは、「1ヶ月間、できるだけ毎日セックスして下さい」ということです。本当は、1ヶ月と言わず3ヶ月くらいは毎日セックスして欲しいと思います。それでもできなければ、不妊クリニックの受診をお勧めします。実際、個人的に親しい方から相談を受けた時には、私はこの話からしています。それだけで妊娠される方も少なくありません。これは、プロとしての真面目なアドバイスです。
そして、最後に、「1ヶ月間文字通り「死ぬ気で」頑張ってみて下さい。」というアドバイスで締め括られています。
どうですか?、一瞬、我が目を疑うような表現ですよね。
とにかく、セックスしまくれ!(すみません、直接的で)というのです。
お子さんを望まれるカップルに勧められるのは、たいていは、タバコやお酒、カフェインのこと、体重のこと、葉酸のサプリメントのこと、そして、セックスのタイミングについて、といったところではないでしょうか。
ところが、それらは妊娠率を上げるためではなく、妊娠率を下げないために「自分たちで出来ること」なのです。
タイミングをあわせることは妊娠率を高めるように思われているかもしれませんが、そのようなエビデンスはありません。
妊娠率を上げるために「自分たちで出来ること」で確固としたエビデンスがあるのは、セックスの「タイミングをあわせる」ことではなく「回数を増やす」ことなのです。
ところが、このことが正確に伝わっていないように思えてなりません。
そこで、今年の最後の月のコラムで、改めて、排卵期に関わらず、不妊治療を受けているいないに関わらず、とにかく、たくさん、セックスすることが妊娠を目指す上で最も大切で有効であることをお伝えしたいと思います。
どれくらい確率が高くなるのか
セックスのタイミングや回数が妊娠率にどのように影響を及ぼすのかを調べた研究では、毎日、セックスを行っているカップルの周期あたりの妊娠率は33%、それに対して、週1回では15%と、半分以下に下がっています。
また、今年のヨーロッパ生殖医学会で大変話題を集めた発表がありました。
それは、通常、人工授精では男性パートナーはクリニックのメンズルームで採精(マスターベーションで精液を採取すること)し、人工授精を行うのですが、その際に2回続けて(1時間以内に)採精し、2回目の精液で使ったところ平均の妊娠率が3倍になったというものです。
このようにセックスの回数が多くなるほど、また、セックス(射精)の間隔が短いほど、妊娠率が2~3倍に高くなることが確かめられています。
セックスの回数が増えるほど妊娠率が高くなる理由
セックスの回数が多くなるほど妊娠しやすくなるのは3つの理由が考えられます。
1つはタイミングが合いやすくなること。2番目は精子の質が高くなること、3つ目は女性の免疫システムが妊娠をサポートするように働くようになることです。
以下に順にみていきます。
まずは、結果としてタミングがあうようになるということ。
セックスのタイミングで最も妊娠しやすいのは排卵の2日前、その次に前日とされていますが、現実には排卵のタイミングを予め予測することが難しいため、1回でタイミングを合わようとすると、かえって、はずれてしまう可能性が高くなってしまいます。
それよりも、隔日、もしくは、毎日、セックスすることで確実性が飛躍的に高まるはずです。
次に、精子の質がよくなるということ。
セックスの回数が増えるほど、男性の射精頻度が高まり、精子の質も高くなります。
前述の人工授精の際に連続した採精を行い、2回目の精子を使うことで妊娠率が3倍になったのは精子の質がよくなったからだと考えられます。精子の質とは精子のDNAに損傷がないということです。男性は、毎日、精子がつくられていますが、時間がたつほど活性酸素のダメージでDNAに損傷を受けた精子が増えていきます。つまり、精子も古くなるほど質が低下してしまうというわけです。
そのため、頻繁に射精するほど精液中に新鮮な精子の割合が高くなり、当然、妊娠の確率が高くなります。
最後に免疫システムのこと。
まず、妊娠、出産がうまくいくかどうかは免疫システムにかかっているということを理解しておく必要があります。
精子や胚、胎児は、本来、母体にとっては「異物」であるため妊娠、出産が正常に進むには免疫システムがそれらを排除しないように働く必要があるからです。
要するに、女性の妊娠力は免疫システムによってコントロールされている面があるわけです。
そんな中で性交で射精された精子が女性の生殖器に接触すると、その刺激によって、女性の免疫システムが精子や胚、胎児を攻撃しなくなるように働くことがわかっています。
また、女性の月経サイクルを通した性行為、そのものが、同じように女性の免疫システムが妊娠をサポートするように働くようになることもこれまでの研究で確かめられています。
夫婦仲良く、が基本中の基本
以上のように、排卵前であろうとなかろうと、不妊治療を受けていてもいなくても、たくさん、セックスすることによって妊娠の確率が高くなるように、私たち人間の身体は出来ているようです。
もしも、体外受精や顕微授精を受けるようになると、その必要がなくなったと思い、セックスがなくなってしまっていれば、認識を改めたほうがよさそうです。
さらに、セックスすることによって、夫婦の関係性がよくなることは、違う次元で有利になるはずです。
最後に、しつこいようですが、もう一度、松林先生からのアドバイスで締めくくります。
「子供が欲しいけどなかなかできない」という方に是非チャレンジして欲しいことがあります。それは、「1ヶ月間、できるだけ毎日セックスして下さい」ということです。本当は、1ヶ月と言わず3ヶ月くらいは毎日セックスして欲しいと思います。それでもできなければ、不妊クリニックの受診をお勧めします。実際、個人的に親しい方から相談を受けた時には、私はこの話からしています。それだけで妊娠される方も少なくありません。これは、プロとしての真面目なアドバイスです。
1ヶ月間文字通り「死ぬ気で」頑張ってみて下さい。