5月1日に名古屋で、5月22日には東京で開催された妊活イベントに参加し、食事バランスについてのアンケートを実施し、バランスよく食べるための簡単な個別アドバイスを行いました。
公衆衛生のドクターや管理栄養士との合同チームで、2日間で約300名弱の方々に回答いただきました。現在、結果を集計し、レポートを作成していますので、今月末頃には完成し、報告できる予定です。
妊活イベントへの参加でいろいろなことがわかりましたが、その中の一つに女性の「やせ」、男性の「肥満」傾向があります。
女性ではやせ(BMI18.8未満)が全体の15%、肥満(BMI25以上)は6.6%、反対に男性では肥満が20%、やせが3.8%でした。
厚労省の最新の国民健康・栄養調査でも同様で、男性の「肥満」は3割で、年齢層別にみると、20代では20%、30代で27.2%、40代になると、30.9%と、男性は年齢とともにメタボ傾向が強くなっていきます。その一方、女性の「やせ」は全体で10%、20代で17.4%、30代では15.6%、40代になると10.9%と、男性の肥満傾向と反対に年齢とともにやせの割合は低下する傾向にあり、40代で全体の割合と同じレベルになっています。
妊活イベントに参加されたカップルの女性は全体傾向に比べて「やせ」傾向が強いようです。
さて、「肥満」や「やせ」は不妊の原因になることはよく知られています。
BMIが18.5未満、あるいは、25以上になれば、必ずしも不妊症になるというわけでは、もちろん、ありませんが、女性の「やせ」や男性の「肥満」が食べ方、すなわち、"バランスよく食べていないこと"からきている場合は、不妊の原因云々以前に、妊娠することや妊娠後の子どもの成育によい環境とは決して言えません。
女性の「やせ」は、摂取したエネルギーは、もっぱら、自らの活動を維持するためだけに使われ、新しい命を育むことに回せないおそれが出てくることを意味し、新しい命の誕生にはそのための十分なエネルギーが必要とされるわけですから、エネルギー不足は妊娠、出産のための、そもそもの土台が揺らいでしまうおそれがでてくるというわけです。
また、妊娠、出産できても低出生体重児になるリスクが高くなり、お子さんの出生後の健康にもマイナスの影響を及ぼしてしまいかねません。これは、現在、関心が高まっているエピジェネティクス、すなわち、遺伝子の発現を調節する仕組みを変化させることによるものと考えられています。
一方、男性の「肥満」は、精子の数や運動能力の低下を招くリスクを高め、また、たとえ、精液検査で問題がなくても精子DNAの損傷率を高め、精子の質を低下させることから、体外受精や顕微授精の治療成績の低下を招いたり、流産のリスクを高めるという研究報告があります。
そして、女性のやせと同様、男性の肥満も子の出生後のさまざまな病気の発症リスクを高めるという研究報告がどんどん蓄積されてきています。
これらのことは、いずれも、最近の分子生物学や栄養疫学の進歩によって、この数年で、わかってきたことです。
その一方、この数年で、「食べ物」や「食べ方」の選択肢も、また、急激に増えました。
このことは、「正しい情報に接し、それを基づいて自分や自分の家族の健康や質の高い生活のためにライフスタイルを選択していくことが大切な時代に、私たちは生きている」ということを意味しているのではないでしょうか?
そういう意味でも、まずは、健康なお子さんの妊娠、出産のために、食べ方を見直す価値は十分にあります。
私たちは、今回の調査を通じて、お子さんを望まれるカップルにふさわしい栄養環境を整えるための効果的なサポートに取り組んでいきたいとの意を、改めて、強くした次第です。