私たちは、「食べて」エネルギーをつくり、「食べて」自分のカラダをつくっているわけですから、「食事」がとても大切であることは誰にもわかることで、そのことを否定する人はいないと思います。
ところが、なにをどう食べればいいのか、すなわち、食事の内容については、いろいろな意見があります。
正反対の意見もあったりして、戸惑うこともあるかもしれません。
例えば、朝ごはんのこと。
朝食を含めて、1日3食、食べるのが普通だと思っていたら、いや、朝食は食べないほうがいい、それどころか、1日1食でいいなんていう主張もあります。
朝食のこと以外にもいろいろと言われています。
試しに大きな本屋さんに行って、健康本の棚を見れば、よくわかると思います。
さて、「朝食」について、私の意見を求められれば、「もちろん、やってみなければわからないと思うけれども、朝食を食べるか、食べないか、それ自体は、それほど大事だとは思わないので好きにすればいいのでは」と思います。
それよりも大切なことがあるからです。
そのことを私たちが実施した調査の結果から教えられました。
それは、5月に名古屋と東京で開催された妊活イベントで実施した食事内容についてのアンケート調査です。公衆衛生の専門家や管理栄養士との合同チームで、2日間で約300名弱の方々に回答いただきました。
そこで明らかになったのは、朝食を食べない、或いは、朝食をいい加減にする人ほど、昼食や夕食の内容に偏り(糖質中心)があり、大豆製品や緑黄色野菜を食べる頻度が少なく、お菓子を食べる頻度が多いということです。
つまり、朝食について考えるときに、大切なことは、「朝食を食べるか食べないか」とか、「どんな朝食を食べるべきか」ということではなく、「どんな食生活を送っているか」に注意を向けるべきなのです。
もしも、このような食べ方を続けていると、食後の血糖値が高くなり、インスリン抵抗性を招いたり、微量栄養素が不足したりといったことが起こりやすくなります。
その結果、卵巣の働きや胚の質の低下のリスクが高くなるかもしれませんし、妊娠糖尿病などの妊娠合併症のリスクも高くなるかもしれません。
もちろん、くれぐれも誤解しないでいただきたいのは、必ず、そうなると言っているわけではありません。遺伝的な体質をはじめ、さまざまな要因が絡むところですので、あくまで、妊娠や出産に不利になることが起こるリスク要因になるということです。
ただし、年齢が高くなれば、若い頃だったら、少しくらい、ちゃんと食べてなくても若さでカバーできたことができなくなるということはありえることです。
いかがでしょうか?
「朝食を食べるべきかどうか」よりも、もっと大切で、注意すべきことがあるということがわかっていただけましたでしょうか。
では、なぜ、朝食をいい加減にする人ほど、食事全体の質が低くなるのでしょうか?
それはわかりません。
食べるということは、生活と密着していて、嗜好や経済的な問題とも密接ですから、全体の傾向が出てくるのでしょうか。
この機会にいろいろと調べてみるととても興味深く、参考になる研究がありました。
それは、日本の女子大学生3931人を対象にソフトドリンクの摂取量と食事内容の関連を調べた東京大学の研究グループによる研究です。
それによると、ソフトドリンクの摂取量が多い人ほど油脂類やお菓子の摂取量が多く、反対に魚介類や果物、乳製品、野菜、大豆製品の摂取量が少なかったというのです。
この結果についてはなぜそうなるのか簡単に想像できます。
コーラにあうのは、ハンバーガーやフライドポテト、ピザ、ドーナツの類でしょう。
繰り返します。
1つ1つの食品や食材、1食の食べ方にこだわるよりも、「自分の食べ方の傾向」に目を向けるべきです。
そう考えてみると、○○は妊娠によいとか、悪いとか、△△は不妊に効くとか、効かないとか、そんなことは、言ってみれば、枝葉末節なことだということがよくわかります。
それよりも、健康なお子さんを授かるのに、どんな栄養素が必要とされるのか、そして、それぞれの栄養素はどんな役割を担っているのか、どのようなメカニズムで働くのか、知っておくこと。
そして、栄養素は「食べて」摂り入れていて、かつ、食べることは、生活に密着した行為なので、自分たちは、どんな「食生活」をおくるのがベターなのか、妊娠や出産に有利なのか、そのことを考え、試行錯誤しながら、自分たちにベストな食生活をつくりあげていくことこそ、大切なことであり、そこに全力投球すべきではないでしょうか。
いつまでも、いい加減な「妊活情報」に振り回されていては、時間と労力を浪費するだけです。
妊活期間には限りがあります。
効率的な妊活に必要なのは「正しい知識」と「優先順位」でないかと、つくづく、思います。