編集長コラム

細川 忠宏

やりたいようにやるという妊活スタイル

2016年09月05日

デンマークのオーフス大学病院とアメリカのボストン大学の研究チームによる飲酒と妊娠しやすさの関係を調べた研究結果が発表されました。

妊娠希望のデンマーク在住の女性に、どんなお酒をどれくらいの量を飲んでいるのか、妊娠したかどうかについて、1年間、調査し、7年半の間、のべ6,120名の女性の結果を集計して、解析したものです。

それによると、1週間に飲む量がビールで言えば缶ビール14本、ワインで言えばグラス14杯を超えると、わずかに妊娠する力が低下するものの、そこまで飲まなければ、それほどの影響はなかったというものです。

1日の量で言えば、ビールであれば、缶ビール1、2本、ワインであれば、グラス1、2杯までということになります。

ただし、胎児への影響を考えて、妊娠の可能性のある時期は避けるべきだと、研究チームは付け加えています。

つまり、お酒については、胎児への影響は慎重になる必要はあるけれども、妊娠する力への影響は、それほど、神経質にならなくてよいということになります。

大切なこと、心配すべきは、「飲むか飲まないか」ではなく、「飲む量」なのです。

このことは、お酒だけではなくて、カフェインや甘いものや糖質、トランス脂肪酸、体を冷やす食べ物、さらには、添加物や残留農薬、環境ホルモンについても言えることです。

要は、影響を及ぼさない範囲であれば、食べたり、飲んだりしても、そのことによって妊娠しにくくなってしまうわけではないというわけです。

その一方で、妊活中、特に、不妊治療を続けていると、妊娠によいものは積極的にとりいれ、反対に妊娠によくないものは我慢しているという話をよく耳にします。

実際に、雑誌や書籍、ネットの妊活情報は、たいていは、これはよい!、これで授かった!、これは悪い!、これは避けるべし!という類のオンパレードです。

こんな情報に接していると、妊娠に近づくため、治療を無駄にしないため、頑張ろうという気持ちになるのもわかります。

ところが、国や研究機関が莫大な予算と長期に渡る労力をかけて調査、研究した結果に照らせば、そのような妊活スタイルは、それほどの効果はないことがよくわかります。

それどころか、精神的なストレスになったり、栄養的なバランスを悪くしたりして、かえって、妊娠から遠ざかってしまいかねません。

これがよい!、これが悪い!という妊活情報には要注意です。たとえ、メカニズムなどのもっともらしい説明がなされていても、です。

興味や関心はそそられはしますが、それほどの意味や価値はなく、実際に、苦労したり、悩まされたりすることになっても、役に立つことはないからです。

本当に、大切で役に立つのは、妊娠する力に影響を及ぼさないであろう「量」を科学的な根拠で示してくれている情報です。

そういう意味で言えば、妊活とは、我慢することでも、頑張ることでもありません。そんなふうに自分を追い込んでみても仕方ありません。

そうではなく、やりたいようにやって、その結果、自らのココロやカラダが喜び、活性化するようになるというのが、私たちがイメージする「やりたいようにやる」という妊活スタイルです。

「やりたいようにやる」というのは、もちろん、「なんでもあり」ということではなく、「自分たちの好みや嗜好、考え方、そして、価値観を一番大切にする」ということです。