今年もあと一週間になりました。
今年も食やライフスタイルと生殖機能の関連についての論文がたくさん発表されました。
それだけ、世界中の研究者の関心も高まっているということでしょう。
その中で、印象に残っているのは、ベルギーの研究で、約1万周期の新鮮胚移植の出産率が治療開始前の1ヶ月間の天候に関連していたというものです(※)。
具体的には、治療開始前の1ヶ月、晴れの日が多く、日照時間が長いほど、出産率が高かったというのです。
あくまで、相関関係があったということで、その原因までは確かめていませんし、わかっていません。
ただ、ビタミンDやメラトニンが関係しているかのもしれないとのこと。
ビタミンDは、妊娠や出産にさまざまなプロセスで重要な役割を果たしていることがわかっていて、ビタミンD濃度が高いほど体外受精の成績がよいという研究があります。また、睡眠ホルモンと呼ばれているメラトニンは卵胞液中で強力な抗酸化作用を発揮し、卵子を保護していると考えられています。
そして、ビタミンDは紫外線を浴びることでつくられるので、日照時間が長くなるとビタミンDがつくられる量が増え、メラトニンの分泌も促進され、それらが不妊治療によい影響を及ぼした可能性があるというわけです。
実は、天気や日照時間は私たちの心や身体の状態に大きな影響を及ぼすという研究報告は膨大にあります。
もしかしたら、「私たちの心や身体の状態に大きな影響を及ぼしている」というのは生半可な表現で、天気や日照時間は「私たちの心や身体の状態を支配している」というのが、本当のところかのまもしれません。
要するに、私たちの体内のあらゆるところに、温度や湿度、光を感知する高感度のセンサーが備わっていて、それによって、心や身体の働きを調節しているというイメージです。
そう考えないと、自分の心や身体の自然な反応が起こることの説明がつきません。
そんな「働き」の一つに生殖能力、すなわち、命を授かるということがあるのでしょう。
もしも、この考え方が大きくずれていなければ、「妊活」の基本は、朝と昼は明るいところで、そして、夜が暗いところで過ごすということになります。
改めて考えてみると、こんな単純なことが意外にもできていない、いや、そうさせてくれない環境に、私たちはいることに気づかされます。
それは、決して、「明るさ」のことだけではありません。食や栄養を取り巻く環境しかり、運動を取り巻く環境しかり、です。
そういう意味で、現代の社会環境は、生活習慣病や認知症、不妊症のリスクを高めるように、私たちを支配していると言っても過言ではありません。
大切なことは、支配されていることを認識し、そして、可能なことから、そこから抜け出し、少しずつでも、自分の環境を自分で支配していくことではないでしょうか。
文献)
Seasons in the sun: the impact on IVF results one month later.
Facts Views Vis Obgyn. 2016; 8: 75-83.