「週刊新潮」の3月30日号で、「トクホ(特定保健用食品)の大嘘」という特集記事が掲載されています。トクホ成分の中でも、主に「難消化性デキストリン」が取り上げられていて、「言うほどの効果はない!」と断罪し、国とメーカーによる壮大な"消費詐欺"とまで書かれています。
難消化性デキストリンの「効果」というのは「脂肪吸収抑制効果」のことなのですが、そもそも、食物繊維や難消化性糖質には、糖質や脂質の消化を遅らせ、食後の血糖や血中コレステロールの上昇を抑制する作用があることは、栄養学的な常識です。
ただ、難消化性デキストリン入りのコーラやお茶がトクホとして許可を受けると、広告などに以下のような表示をすることができるようになります。
「本品は、食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させる難消化性デキストリン(食物繊維)の働きにより、食後の中性脂肪の上昇を抑制するので、脂肪の多い食事を摂りがちな方、食後の中性脂肪が気になる方の食生活の改善に役立ちます。 」と。
さすがに、内容的には全くの「嘘」ではありません。
難消化性デキストリンには、数パーセントの脂肪抑制効果があることが、一応、実験で確かめられていますので。
ただし、たかだか、数パーセント未満、抑制されるだけなのです。
たった、数パーセント、そんな程度です。
なので、冷静に考えてみれば、たとえ、トクホのコーラを一緒に飲んでも、いくらなんでも、「チャラ」にまではならないことは、誰でもわかります。
一番の問題は、トクホコーラを飲めば、まるで、チャラになるかのように煽っている、「広告」ではないでしょうか。
グラフなどで、派手で、いかにもなトクホコーラの広告を目にされた方も少なくないでしょう。
そして、つくづく、思い知らされるのは、そんな、トクホコーラに「過大な期待を抱き、間違った使い方」をして、結局、損をするのは、広告に煽られたユーザーなのだということです。
トクホという、国のお墨付きの制度による表示ですから同情的にはなりますし、嘘はないからと言っても、トクホコーラを食事と一緒に飲むことが「食生活の改善に役立つ」と、そこまで言ってしまうのは、いくらなんでも言い過ぎな「表示許可」だとは思います。
そういう意味では、週刊新潮が非難するように、国とメーカーがグルになって消費者を騙したと言っても過言ではないのかもしれません。
そんなこんなはありますが、期待して裏切られ、「損をした」のは、使い方を間違えたユーザーであることは間違いありません。
さて、前置きが大変長くなりましたが、今回のトクホの問題はサプリメントが抱えている問題と全く同じだということを言いたいのです。
サプリメントにしろ、健康食品にしろ、総じて、「過剰な期待を抱き、間違った使い方」をされていることが、あまりにも多いように思えてなりません。
サプリメントの正しい使い方というか、本来の使い方、少なくとも損をしないような使い方をするためには、やはり、医薬品と食品(栄養素)との違いを知っておくことが大切だと思います。
それは、医薬品は個人プレイヤーで、栄養素はチームプレイヤーだということです。
つまり、医薬品は一人で作用を発揮しますが、栄養素は一人ではなにもできなくて、チームで協働して働くということです。
スポーツにたとえて言えば、テニスやボクシングなどは一人で戦えますが、野球やラグビーでは一人ではなにもできないのと同じことです。
野球では、いくら、イチロー選手と言えども、一人では戦えませんし、イチロー選手ばかり、たくさんいても意味がありません。
やはり、9人が、各ポジションに一人ずついて、はじめてチームになり、戦えるようになるわけです。
そのため、医薬品を正しく使うために必要なのは「用法用量を間違いなく飲む」こと、それだけで十分です。
それに対して、栄養素、すなわち、サプリメントを正しく使うために必要なことは、大前提としての「チームづくり」なのです。
いくら、なくてはならない栄養素でも、それだけをせっせと摂っても、それだけではあまり意味がないどころか、チームの和を乱してしまって、期待に反してマイナスに働いてしまいかねません。
それでは、人間が生きていくうえで、また、健康な妊娠、出産のための理想的なチームとはどんなメンバーなのでしょうか?
それは、5大栄養素と呼ばれている、たんぱく質や脂質、糖質、ビタミン、ミネラルなど50数種類の栄養素と食物繊維が、過不足なく、すなわち、多過ぎず、少な過ぎず、揃えること、です。
どんなサプリメントでも、このチームづくりに取り組んで、はじめて、働いてくれるようになります。
チームづくりができていないままに、いくら、機能性の高い栄養素を補充しても、うまく働いてくれません。
順番が逆だからです。
このメカニズムを理解しておきさえせすれば、大きく間違った使い方をして、マイナスになったり、お金を無駄にしないで済むようになると思います。
そして、理想のチームづくりは、取りも直さず、「バランスのよい食生活」でしか実現できません。
つまり、サプリメントの本来の役割は、食事だけではチームづくりがうまくいかない場合、足らないところを補完し、チームを構成するメンバーのバランスを整えることに他なりません。
妊娠する力という観点で言えば、妊娠率を高めるサプリメントは存在しません。
もしも、チームづくりがうまくいかない場合、それによって妊娠率が低下してしまうことがあります。
その場合、食事を見直し、サプリメントで補い、チームを立て直せば、やがて、低下していた妊娠率は元に戻るかもしれません。
ここを理解しておき、正しく栄養素を摂取しないと、広告に煽られ、損をしてしまうことになりかねません。
最近、個人プレイヤーの顔をした栄養素や食品が、たくさん、出回っています。
顔は販売のためにつくられたものにしかすぎませんので、惑わされてはいけません。
医薬品は個人プレイヤーなので、力があり、時に、暴走して、副作用という悪さをすることもあります。
栄養素はチームプレイヤーなので、それほどの力は持ち合わせていなくて、一人では、ほとんど、なにもできません。
でも、仲間とチームになれば、大きな力を発揮します。
どちらかと言えば、瞬発力よりも、持久力に秀でているようです。
いいチームをつくりましょう。
きっと、期待に応えてくれるはずです。