メールマガジンの配信をはじめて、かれこれ、14年になりますが、今更ながらに思うのは、「これとこれをやれば妊娠できる」という方程式はないということです。
そもそも、「授かる」という言葉が見事に象徴しているように、全くの受け身であり、待つしかないわけです。
であれば、「どうしたら妊娠できるのか」を追求するというような、ないものねだりをするよりも、「こういうことをすると妊娠しづらくなる」という「べからず集」を考えるほうが、結局は、効果的なのではと思い至るようになりました。
そこで、妊娠しやすいカラダづくり版、「妊娠べからず集」を考えてみました。
まずは、「太り過ぎない、やせ過ぎない」ということ。太り過ぎたり、やせ過ぎると妊娠するまでの期間が2〜4倍になります。肥満の目安はBMIで25以上、やせは18.5未満です。
次に「タバコを吸わない」ということ。タバコを吸う人は吸わない人よりも不妊症になる確率が60%高くなります。
また、「お酒を飲み過ぎない」ということ。アルコールを1日2単位以上飲む人は飲まない人に比べて不妊症になる確率が60%高くなります。1単位とは、ビールでは中びん1本(500ml)、日本酒では1合(180ml)、ウイスキーではダブル1杯(60ml)、焼酎で0.6合(110ml)が目安です(公益社団法人アルコール健康医学協会)。
そして、「カフェインを1日250mg摂らない」ということ。カフェインを1日250mg摂る人は摂らない人に比べて妊娠するまでの期間が約2倍になります。コーヒー1杯で100〜150mg、紅茶で50〜80mg、緑茶(キリンの生茶のペットボトル)で75mgのカフェインが含まれているとされています。
食事では、「精製された穀物や加工食品、スナック菓子を食べ過ぎない」ということ。
自然の状態に近い、新鮮な食材を調理して食べるということですが、食べ方として、よく研究されているのは地中海食で、不妊症リスクの低下や体外受精の良好な治療成績に関連するという研究報告がいくつもあります。
地中海食的食べ方を和食に当てはめると、精製度の低い穀物を主食とし、大豆や魚を中心に、新鮮な魚や野菜、そして、オメガ3脂肪酸のオイルをたっぷり食べるという食べ方になります。
また、「食べ過ぎない」ということ。昔から腹八分目と言われるようにトータルの量を食べ過ぎないということは、もちろん、特定の食材や食品だけをせっせと食べるという「極端な食べ方」をしないということもあります。
生活面では「夜はスマホやPCをみない」ということ。夜にスマホを見ないというのは象徴的なべからずで、「体内時計を狂わさない」ことです。体内時計が狂うと妊娠率が低下したり、流産率が高くなるリスクが伴います。
体内時計を狂わさないようにするには、「夜更かしをしない(12時迄に寝る)」、「朝食を抜かない」などもあります。
そして、「運動不足にならない」ということ。言い換えれば、「座り続けない」ことです。
また、「決められたタイミングだけの性交渉にならない」ということ。自然妊娠でも、一般不妊治療でも、さらには、体外受精や顕微授精でも、女性のサイクルを通して、数多く性交渉をもつことが妊娠率を高くすることに寄与するという研究報告があります。
もう一つ、ビタミンやミネラル、ビタミン様物質以外の「サプリメントや健康食品は摂らない」ということ。
妊娠、出産に欠かせない栄養素が不足すれば妊娠、出産に不利になることは明らかです。ところが、それ以外の成分を補充することで妊娠に不利になることはあっても、有利になることが証明されているものはありません。そのようなものが出てくるまでは、わざわざ、リスクを負う必要はありません。
また、考え方として、「卵子の質をよくしようなどと思わない」ということ。
老化現象を逆転できないのと同じように卵子も質をよくすることなどできません。できないことに取り組むことほど、無駄、かつ、虚しく、かつ、ストレスを感じることはありません。
現実に期待すべきこと、取り組むべきことは、「質の低くなった卵子の質をよくすること」ではなく、「質のいい卵子に出会うこと」、「卵子の質を悪くしない」ことです。
そして、最後に強調したいことは「がんばらない」ということ。
妊娠はがんばってやるものでも、できるものでもありません。世の中にはがんばればできることとがんばってもできないことがあります。
妊娠するという結果にこだわること、そのものがナンセンスなだけでなく、コントロールできないことにこだわることで、ストレスを高め、かえって、妊娠から遠ざかってしまうようなことになれば、本末が転倒してしまいます。
通院のための時間やコストを捻出したり、自分たちにふさわしい治療法や施設を検討することには、多少の努力が必要かもれませんが、妊娠、そのものは頑張りとは全く関係のないところで進むものです。
頑張る必要があるのは出産以降のことですので順番を間違えてはいけません。
このことをリプロダクションクリニック統括院長の松林先生はブログで以下のように書いていらっしゃいます。
・妊娠には「ニュートラルな気持ち」で!
・ニュートラルな気持ちへの持っていき方
いかがでしょうか?
こうすれば妊娠できるという方程式はありませんが、こんなことをすると妊娠しづらくなるという「べからず」はあるということ、つまりは「確率論」なのです。
であれば、ふたりが、仲良く、気持ちのよい日々を送り、新しい命が育まれることになる、自分たちの身体を大切にし、互いに思いやることこそが、新しい命がやってくる確率を低くしないことになるのだと思います。