編集長コラム

細川 忠宏

妊活情報のドーナツ化現象を考える

2017年08月07日

この数年で、「妊活」という言葉が、またたくまに、広がりました。それに伴い、ネット上の「妊活」情報も、溢れんばかりになりました。

因みに、グーグルで「妊活」で検索してみると、なんと!約 9,930,000 件のサイトが表示されます。

そんなふうに「妊活情報」が増えれば増えるほど、お子さんを望まれるカップルの関心事が、どんどん、細かいというか、サブ的というか、誤解を恐れずに言えば、些細なこと、すなわち、どちらかと言えば、あまり、重要でない事、どちらでもよいような事になってきているように思えてなりません。

私たちが、このメルマガの配信を始めて14年ほどになりますが、お寄せいただくご質問やご相談の内容をみていて、感じることです。

最初は、情報が多くなると関心事が「高度化」するので、その結果なのかもしれないと思っていました。

ところが、最近、これは「妊活情報のドーナツ化」現象によるものかもしれないという仮説を思いつくに至りました。

それはこういうことです。

「妊活」で検索し、表示されたサイトをみてみると、ほとんどは、妊活関連商品やサービスのサイトであることがわかります。

つまり、妊活に役立つサプリやグッズ、代替医療の施設の宣伝が目的の情報が多いということです。

そして、宣伝が目的であれば、当然、「差別化」が大切になってきます。

「差別化」とは他の商品やサービスとの「違い」をつくることであるため、情報の内容は、「細かい」こと、「サブ的」なことになるのも、当然のことです。

要するに、商品やサービスを「売る」ための情報であるからです。

たとえば、妊活のための「食」や「栄養」について言えば、「バランスよく摂取する」ということが基本であり、メインの情報です。

ところが、商品を売るためには、「無添加」とか、「天然」であるとか、「◯◯制限」であるとか、「◯◯◯ティック」であるとか、「大勢の人が使っている」とか、「◯◯先生監修」とか、「賞をとっている」とかとか、そんな情報をメインに押し出すことになります。

つまり、健康なお子さんを授かるための「食」や「栄養」ということを考えるうえで、それほど重要でない、サブ的、かつ、細かい、もっと言えば、どうでもいい情報です。

その結果、メインの領域が空洞化し、その周辺、周縁部分の情報が、どんどん、増えているという現象が進行しているというわけです。

このような現象を、私たちは「妊活情報のドーナツ化」と呼んでいます。

さて、情報のドーナツ化は、決して、喜ばしいことではありません。

もちろん、経済活動的に言えば、全く、当然のことなのですが、受け取る側の関心事もサブ的、かつ、細かいこと、どうでもいいことが中心になってしまうとどうでしょうか?

無添加で、天然にこだわって、バランスよく食べていないとか、◯◯を制限したり、妊活食材ばかり食べることで、偏った食べ方になってしまうと、「本末転倒」と言っても決して過言ではないからです。

情報は接し方、使い方次第で、益にも、害にもなってしまいます。

接し方、使い方を養いたいものです。