最近、サプリメントについてのご相談で、今これこれのサプリメントを飲んでいるのだけれど、これ以外に飲むべき、飲んだほうがいいサプリメントを教えて欲しいというご相談が、以前に比べてとても増えています。
たいていは、それまで飲んでいるもので十分、いや、それどころか、私たちから見ると不要なものまで飲まれているケースも少なくありません。
そんなご相談に、日々、接していて思うのは、皆さん、意識が高く、熱心に情報を集めておられるということです。
それで、そんなふうに情報を集めれば、集めるほど、自分には他に摂るべきものがあるのではないかという思いが強くなって、今のままでは不十分ではないかという不安を抱くまでになっている、そんなふうに思えてならないのです。
限られた治療機会に最善を尽くしたいという考えは理解できますし、後悔したくないという思いも痛いほど伝わってきます。
ところが、そんな思いとは裏腹に、不要で、場合によってはマイナスの影響を及ぼすようなリスクを抱え込んでしまいかねないサプリメントまで、せっせと飲んでいるというケースに、たびたび、出会うと、なんともやりきれない気持ちになってしまいます。
なぜ、そうなってしまうのか、大きく2つあるように思います。
まず、サプリの目的が妊娠そのものになってしまっているのではないかということ。
妊娠の成立に関与する成分は無数にあり、それらが相互、かつ、複雑に作用しているため、妊娠するためのサプリメントを探せば、必要と思えるものはいくら出てきてもおかしくありません。
その上に「原因不明不妊」なんて言われ、ターゲットが漠然としているのに積極的な対策を講じようとすると、いくらでも必要と思えるものが出てきて、それこそきりがありません。
出来れば、サプリメントを使う目的を「妊娠すること」という漠然としたものではなく、たとえば、「それまでの生活や食事では不足しそうな必須栄養素」というような具体的、かつ個別なテーマとすべきでしょう。
もう1つは、自身の妊娠する力を低く見積もっているのではないかということ。
もちろん、そう思うようになった、それぞれの経緯があるのだとは思います。
ただし、そのために、このままでは妊娠できないのではないかという不安から、やっておくべきことがあるはず、もっと補充すべき成分があるはずだと、頑張ろうとする気持ちに拍車がかかるのではないでしょうか。
妊娠する力というのは筋力のように数字で示すことが出来て、それなりの努力をすれば高められるような、そんな単純なものではありません。
そうではなく、なんて言えばいいのか、軽々しく、妊娠する力などと呼んで、私たちが実感し、理解できる物差しで測れるようなものではないように思うのです。
そういう意味では、妊娠する力というものは、評価する対象というよりも信じる対象であるべきなのかもしれません。
いずれにしても、妊娠を目的にしたり、原因がわからないもの対して対策を講じるようとすると、結局はあれもこれもと、キリがなくなってしまうことは間違いありません。
サプリメントは単なる栄養補助であり、補助に対して過剰な期待は禁物です。
求めるべき情報は、販促情報ではなく、栄養学や生理学であり、期待し、信ずべき対象は自分たち自身のカラダであるはずです。
どんなことでも、頑張り過ぎると、必要なものだけでなく、不要かもしれないもの、不要なものにまで、過剰に取り組んでしまうことはよくあることです。
自分で納得して取り組むのであればまだしも、よくわからないままに不要なものまで取り入れて、そして、それがマイナスになってしまったり、さらには、もっとやるべきことがあるのに、まだまだできていないという思いがストレスにまでなってしまうと、本末転倒と言わざるを得ません。
こんな落とし穴があるということを知っておくだけでも、落とし穴にはまるリスクは低くなるように思います。