サプリメントの広告で、よく、摂取できる栄養素の量を食べ物の量に置き換えて宣伝されているのをみかけることがあります。
たとえば、レモン50個分のビタミンC含有という、アレです。
とてもわかりやすく、かつ、レモン50個なんて、到底毎日食べられるものではなく、そんな量の栄養素が簡単に摂れるわけですから、一見、とても魅力的ではあります。
ところが、本当に、レモン50個分の栄養素が、毎日、必要なのでしょうか?
サプリメントは食事で不足する栄養素を補充するものなのですが、冷静に考えてみれば、そもそも、食べきれない量の食べ物に含まれる栄養素が不足する・・・、なんてことはあり得ないわけです。
もちろん、それだけの量が必要とされることもあるでしょうが、それは、もはや、セルフケアというよりも治療の範疇でしょう。
うがった見方をすれば、不足を心配する消費者の心理に巧みにつけこんだ、売らんがための広告、なんて言えなくもありません。
こんなことを書くと、もしかしたら、広告にそこまでこだわらなくてもいいじゃないかと思われるかもしれません。
ただ、私はこれがサプリメントの誤った使い方に拍車をかけているように思えてならないのです。
サプリメントの誤った使い方、それは「身体によいものであれば、たくさん摂れば摂るほどよい」というものです。
それは、誤った幻想であり、特定の栄養素ばかり、必要以上に摂るのは、百害あって一利なしです。
なぜなら、栄養素はチームプレイヤーとして働くからです。
因みに、医薬品は個人プレイヤーです。
要するに、栄養素は一人ではたいしたことはできないけれども、チームになればいい仕事をする、一方、医薬品は、一人で仕事ができるというわけです。
そのため、栄養素を活かす最大のポイントは「いいチームをつくる」ということになります。
たとえば、妊娠、出産に深く関与している栄養素だからと言って、それだけをたくさん摂っても、あまり意味がないわけです。
イチロー選手がいくら素晴らしいプレイヤーだからと言っても、イチロー選手ばかり9人揃えても、決して、強い野球チームにならないのと同じことです。
最近、食と生殖機能の関連研究では、特定の栄養素ではなく、食事パターン、すなわち、栄養素単体ではなく、チームで見ることが主流になってきていることが、そのことを物語っています。
それにもかかわらず、よいものは多く摂れば摂るほどよいという幻想は、チームよりも、特定の栄養素に目を向けてしまいます。
そして、◯◯何個分の◯◯は、そんな幻想を助長するだけではないかと。
サプリメントの目的は食事の補助です。
どのように補助すべきかを考える場合、まずは、補助される側、すなわち、食事内容ですね、それがどんな状態なのか、そこを把握することから始めなければなりません。
そして、目指すべきは、必要な栄養素を過不足なく摂れるような「バランスのとれた食事」をすること。
具体的には、朝、昼、夜、「主食と主菜、副菜をいくつか」が揃い、1日に1回は乳製品と果物を食べるような食べ方です。
まずは、普段の食事がそうなっているかどうか、そこをみつめることがはじまりです。
もしも、そうなっていないのであれば、いつ、なにを増やし、なにを減らすか、また、既に、ある程度、バランスよく食べているのであれば、それぞれの食材の種類をどう増やすかなど、それらのギャップを埋めるための計画を立てることからスタートすべきです。
そこをすっ飛ばしてしまうと、行き先を決めないまま、電車に乗ってしまうようなものです。
魅力的なキャッチに惑わされ、いろいろなサプリメントに目移りし、試してはやめてを繰り返し、お金をかけているわりには何の問題解決にもならなかった、そんなことになってしまいかねません。
取り過ぎは減らし、不足を増やす、さらには、食材のバリエーションを増やすことです。
その上で、不足しているものを増やすために、短期間で効率的に増やすのがサプリメントの役割です。
このプランを実行することこそが、妊活であり、あるべき食事と普段の食事とのギャップを埋めるための効率的な手段の1つが妊活サプリなのです。
食事の改善において目を向けるのは「量」ではなく、「質」です。