編集長コラム

細川 忠宏

大切なのは「方法」ではなく「目的」

2019年12月30日

仕事柄、妊活中の方から、「妊娠のためになにを食べたらいいのか」という質問をされることが少なくありません。

たいてい1日に3回の機会があり、なにを食べるかについての選択肢はいろいろあって、その気になれば自分でどうにでもできるわけですから、「自分で出来ること」の中でも食べ物に関心が高まるのも、当然のことだと思います。

ただ、なにを食べたらいいのか?、すなわち、結論というか、答えを求められると、あれやこれやの話しにはなるのですが、結局は、あまり、"お役に立てた感"がないことが多いように思います。

要するに、「結論」を得てしまうと、どうも、食生活の改善につながりにくいように思えてならないからです。

たとえば、全粒穀物がいいと答えると、「食べもの」が前面に出てくることになって、そうすると、それが食べやすいかどうか、好みにあうかどうか、どう調理するかになってしまい、なんて言えばいいのか、関心が「妊活食」に向いていると、どう食べるか、どう取り入れればいいかというように、話しが「方法論」になってしまうのです。

そうなると、食の改善は簡単ではないよね!、そんな流れになってしまうのが、私のこれまでの経験から言えることです。

ここは、方法ではなく、目的、すなわち、なぜ、全粒穀物がいいのかに目を向けることがよいように思います。

つまり、全粒穀物には、どんな栄養素が含まれていて、それらが、体内でどのように働いて、生殖機能にどのような影響を及ぼすのか、そんな「身体の仕組み」に目を向けると、話しに奥行きが出てきて、俄然、モチベーションが高まります。

もしも、主食を全粒穀物を中心に食べるということの影響の広さと深さに「腹落ち」すると、主体性が出てきて、自ら全粒穀物を取り入れようとしようとするに違いありません。

自分が主体になって行動してみると、方法論として捉えていたときには、思いつかなかった工夫やアイデアが湧き上がってきて、現実感が出てくると、よい循環が出てきます。

大切なことは「方法」ではなく、「目的」です。

答えを求めることから始めると、効果的な食事改善が実現しにくいだけではなく、結局、答えにだどりつくことが出来ません。

なぜなら、「妊娠のためにはなにを食べればいいのか」は、人、それぞれ、カップル、それぞれであって、正解はないからです。

自分たちにふさわしい答えを、自分たちで導くのです。

それは、自分たちが主体になってカラダの仕組みを勉強し、ふたりで話し合い、試行錯誤する中で、いろいろな発見があり、感動があり、自分たちにふさわしい食生活を楽しむようになるということです。

もはや、食べ方ではなく、生き方の問題です。

もしも、答えを求めることから始め、答えを得たように錯覚してしまうと、大切な機会を放棄してしまうことになりかねません。

順番が大切です。

私たちはこれからも食と生殖機能について信頼できる情報をお届けしたいと思います。