40歳以上の女性では、サーカディアンリズムの乱れが卵巣機能低下を早めるかもしれないという、大変興味深い研究結果が、中国の上海交通大学の研究グループから発表されています。
サーカディアンリズムというのは、私たちの身体に備わっている約24時間周期のリズムのことで、このリズムが睡眠と覚醒や体温変化、ホルモン分泌のタイミングになってあらわれます。
そして、このリズムをもたらしているのが体内時計で、脳にある中枢時計と全身の組織にある末梢時計があり、脳内の中枢時計が光刺激で末梢時計をコントロールしていると考えられています。
その体内時計の正体は時計遺伝子の発現で、研究では体外受精を受けている女性の採卵時に採取した卵子の周囲から取り除かれた顆粒膜細胞の時計遺伝子の発現量を測定し、高齢(40歳以上)女性と若齢(39歳以下)女性で比較しました。
その結果、高齢女性では若齢女性に比べ、時計遺伝子の発現量の低下していること、また、卵巣年齢の目安となるAMH(アンチミューラリアンホルモン)とリンクしていることを見い出しました。
つまり、そもそも、女性の年齢により卵巣機能が低下することは避けられませんが、体内時計の乱れは卵巣機能低下を加速させる可能性があるというわけです。
このことは、老化には、自然な老化と不自然な老化があるということを教えてくれています。
不自然な老化、すなわち、老化を加速させるファクターとして、喫煙や過食、偏食、運動不足などはよく知られています。
もちろん、それらも卵巣機能にマイナスの影響を及ぼすことが知られていますが、体内時計の乱れ、すなわち、精度の低下は臓器の中でも卵巣が最も影響を受けやすいようです。
この研究では、ヒトの顆粒膜細胞だけでなく、マウスの卵巣と肝臓の時計遺伝子の発現量を測定し、加齢マウスと若齢マウスで比較しています。
その結果は大変興味深いもので、肝臓の時計遺伝子の発現量においては加齢マウスと若齢マウスでは差がなかったのに対して、卵巣では加齢マウスは若齢マウスに比べて発現量が低下していたというのです。
つまり、卵巣は体内時計の乱れによる臓器の老化がいち早く始まるというわけです。
そもそも、卵巣の働きは生殖サイクルが支配していることを考えると当然のことと言えるかもしれません。
さて、卵巣の不自然な老化を阻止するにはどうすればよいのでしょうか。
体内時計に影響を及ぼすのは「食」と「光」です。
これは私たちがコントロールすることが可能です。
ポイントは朝食と夜の光で、具体的には、タンパク質を含む朝食を食べること、そして、夜はスマホを見ないこと、この2つです。
1日のスタートに朝食を食べることで体内時計が正常にリセットされるようになり、夜にスマホやタブレットの強力な光が目から脳を直撃すると昼間と勘違いしてしまうからです。
卵巣老化を遅らせる生活習慣として、朝食とスマホの扱いは盲点になっているように思えてなりません。