編集長コラム

細川 忠宏

男性のプレコンセプションケア

2020年11月02日

思春期から若年成人期にメンタルヘルスに問題があった男性の子どもは、問題のなかった男性の子どもに比べて早産児のリスクが約7倍も高くなるという研究結果がオーストラリアから報告されています。

妊娠前の両親のメンタルヘルスの子どもの心身の健康への影響を調査することを目的とした世代間コホート研究のデータを用いて実施された研究で明らかになったとのことです。

早産と言えば、これまで母体の内科、婦人科的な合併症として、或いは、母親の喫煙やストレスなどが関連する、つまり、母親になる女性の問題であると考えられてきました。

胎児は母親のお腹の中で育つわけですから、このことは直感的に理解出来ます。

ところが、男性側、それも、これまで報告されていたメタボなどの身体の健康状態ではなく、うつや抑うつ気分、不安などのこころの状態が、胎児の成育にマイナスの影響を及ぼすことがわかったというのですから驚きました。

それも、パートナーが妊娠する前です。

もちろん、明確なことはわかっていませんが、メンタルな問題が長期に渡った場合、精子になんらかの影響を及ぼすのかもしれないし、メンタルの問題が身体の健康にマイナスの影響を及ぼし、そのことが精子を介して、子どもに影響するのかもしれないとしています。

いずれにしても、これまで精子の役割は、男性のDNAを卵子に運び込み、受精のスイッチをONにすることだと考えられてきたわけですが、もっと複雑なメカニズムが備わっていて、男性の遺伝情報以外の情報も運び込んでいるというわけです。
さて、長らく、不妊治療は夫婦二人で取り組むもので、検査も男女が同時に受けるべきであるということ、また、男性のパートナーの女性へのサポートの大切であることが指摘されてきました。

ところが、今や、男性はサポーターではなく、当事者であり、男性にもプレコンセプションケアが重要であることを認識すべき時代になったわけです。

プレとは「前」、コンセプションとは「妊娠」という意味で、男性のプレコンセプションケアとは、子どもをもちたいという男性は現在の自身の生活や健康に関心をもち、ケアするという意味です。

まさに、子どもの養育は妊娠する前から始めるということであり、女性だけでなく、男性も取り組むべきであるということに他なりません。

以下は、産科と婦人科という医学誌の2020年8月号の「男性のプレコンセプションケア」にて掲載された男性不妊症と関連すると考えられる生活習慣です。

・喫煙
・アルコール
・サウナ、長風呂
・肌にフィットした下着
・ノートパソコンも膝の上での使用
・長時間の自転車、バイク
・不規則な生活、短い睡眠時間
・AGA(発毛・育毛・薄毛)治療薬
・放射線曝露
・性交渉の回数が少ない
・長い射精の間隔
・肥満

そして、以下はCDC(米国疾患予防管理センター)が、パートナーが妊娠する前の男性への提言です。

・計画を立てて実行しよう・
・性行為感染症の予防と治療をしよう
・喫煙やドラッグをやめて過量のアルコール摂取もやめよう
・毒性のある物質に注意しよう
・不妊症を予防しよう
・健康的な体重を維持しよう
・家族歴を学ぼう
・暴力をやめる、また助けを求めよう
・精神面でも健全に
・パートナーに協力しよう