編集長コラム

細川 忠宏

優先順位は「下流」ではなく「上流」から

2021年12月06日

メラトニンは、睡眠をサポートするホルモンで、スーパーな抗酸化物質でもあり、細胞を活性酸素から守ってくれています。

なにがスーパーなのかと言いますと、体内に多く存在する抗酸化物質は、たいてい、脂溶性か水溶性なので限られたところでしか働けず、限られた種類の活性酸素を無毒化した後は、抗酸化能が失われるのですが、メラトニンは、油にも、水にも溶けるので、守備範囲が限定されないので、ほとんどの活性酸素を無毒化出来るのです。そして、それだけでなく、その後も抗酸化作用を失われないという、まさに、オールラウンドの抗酸化剤なのです。

強力なアンチエイジング作用があり、動物実験では体内のメラトニン量が多いほど寿命が長くなることが確かめられています。

「寝る子は育つ」と昔から言われていますが、おそらく、メラトニンの作用も貢献しているのでしょう。

メラトニンは、妊娠や出産にも重要な役割を担っていて、どこよりも卵胞液中に高濃度に存在し、卵胞発育に伴って濃度が高くなることから、卵子を保護し、質の低下を防いでいると考えられています。

実際に、メラトニンを飲むことで受精率が改善されるという研究報告もなされていて、不妊治療の補助として使用されています。

このメラトニン、分泌量は年齢とともに低下し、10代をピークに、50~60代では10代の10分の1程度にまで低下するというのです。

要するに、老化現象は、メラトニンの量の低下が一因になっていると言えるわけです。

若い頃は、メラトニンがバンバン出ているので、よく眠れるし、身体の回復も早い、卵子も悪くならない。

また、少々、無理をしても、もちこたえられるわけです。

ところが、年齢を重ねるとそうはいかなくなってくる、その理由の一つに、スーパーなメラトニンが少なくなっているということが、当然、考えられます。

それならば、メラトニンをサプリメント的に補充すればいいじゃないかとなるわけです。

ただ、それもいいのですが、どのようにすれば、メラトニンの低下を食い止められるのかを考えてみることで「若さを保つ効果的な方法」がわかるはずです。

メラトニンの低下を抑制するには、当然ですが、体内でメラトニンがつくられる際の材料や関与する成分をしっかりと摂取すること。

もう1つは、メラトニンが分泌される働きを低下させないようにすることです。

まずは、メラトニンの材料はトリプトファンで、必須アミノ酸の一種です。

牛・豚などの赤身肉やレバー、チーズなどの乳製品、カツオ・マグロなどの青魚、スジコやタラコなどの魚卵、豆腐や納豆などの大豆とその加工品、果物ではバナナにトリプトファンが多く含まれています。

そして、葉酸やナイアシン、鉄を補酵素としてヒドロキシトリプトファンに変換され、そこから、ビタミンB6を補酵素としてセロトニンに変換され、さらにマグネシウムを補酵素としてメラトニンがつくられています。

これら、必須アミノ酸やビタミン、ミネラルの内、どれか1つでも不足するとメラトニンがうまくつくられなくなります。

そのため、まず取り組むべきは、いろいろな食材をバランスよく食べること、です。

次に、そのメラトニンを適切なタイミングと量で分泌する働きは「光とリズム」によって調節されています。

そこで、毎朝、同じ時間に起き、太陽の光を浴び、夜は暗くし、ウォーキングやジョギング、水泳などのリズミカルな運動で、身体を動かし、呼吸法で自律神経を整えるとメラトニンの分泌機能の活性が上がります。

その結果、メラトニンが、外から補充するよりも適正な量で分泌、すなわち、個々に必要とされる量だけが分泌されるようになります。

このように、「下流」ではなく、「上流」をおさえることで、メラトニンの前段階のセロトニンの分泌量も適正化されます。

セロトニンは脳内の神経伝達物質なので、その結果、こころも身体も元気になり、メンタルのバランスがよくなります。余談ですが、このセロトニンが不足するとうつ状態になります。

つまり、体内のメラトニンの分泌メカニズムを最適化することで、一石でなん鳥にもなるというわけです。

体内ではあらゆる臓器、あらゆる細胞は孤立しているわけではなく、互いに密接なネットワークでつながっていて、そのネットワークが身体を機能させています。

そのため、いいことだらけなのは、当たり前と言えば、当たり前なことです。

老化を遅らせるということは、なにも特別なことをするわけではなく、当たり前な順番で、当たり前なことを、毎日、繰り返すこと、ですね。

老化の進行度合いには個人差が大きいのは、このあたりに原因がありそうです。