国立がん研究センターの研究グループは、低炭水化物食はがんにかかるリスクを高めるおそれがあるとの研究結果を発表しました。
研究では、がんにかかっていない男女、9万人を17年間追跡し、食事の炭水化物、タンパク質、脂質の摂取割合とがんの発症との関係を調査しました。
その結果、炭水化物の摂取割合が少ないほど、がんにかかるリスクが高かったというのです。
巷では、炭水化物は悪いとか、糖質制限ダイエットとか、散々、言われていますが、そんなことは、あくまで、一部の人にのみ言えること、かつ、目先のことで、栄養素に良し悪しなどあるわけがないことを、この研究結果は示しています。
そもそも、人間は雑食動物であり、「なんでも」食べることで、健康を維持、増進できるように出来ています。
ところが、なにかを制限すれば、なにかが多くなり、なにかを多くすれば、なにかが少なくなってしまいます。
そのため、制限したり、増やしたりすることに合理的な理由があったとしても、その結果、別のものが増えたり、減ったりすることで、当初の目的を達成しても、それに伴い、悲しいかな、別の問題が発生するというメカニズムになっているわけです。
今回の研究では、炭水化物を減らすことで、動物由来のタンパク質や脂質の摂取量が増え、そこに含まれる発がん性物質も多く摂ることになったのではないかとのこと。
炭水化物を減らすことに伴うデメリットはまだあります。
たとえば、炭水化物を減らすことで、LDLコレステロールが上昇するという研究報告もなされています。
また、ご飯を制限することで、糖質を減らすことに成功しても、食物繊維の摂取量が少なくなり、お通じが悪くなり、便秘がちになってしまいます。
食物繊維の摂取量が少なくなることは、妊娠率の低下をも招いてしまうかもしれません。
食物繊維の摂取量と妊娠率は負の相関関係にあり、実際、1日の食物繊維の摂取量が25グラム以上の女性は16グラム以下の女性と比べて、自然妊娠の妊娠率が13%も高いという研究報告がなされています。
さらに、炭水化物を減らすことで、腸内細菌叢が変わってしまう可能性が指摘されています。
私たちの健康に深く関わっている善玉菌の中には穀物をえさにしているケースが少なくないことはよく知られています。
このように、出来るだけ精製度や加工度の低い穀物から、炭水化物を食べることは、私たちの健康にとって極めて大切なことです。
重要なのは、制限ではなく、バランスです。
もしも、妊活食なんていう魅力的な食べ方が推奨されていても、それが、なにかを制限したり、増やしたりするような食べ方であれば要注意です。