新年度がはじまり、不妊治療への保険適用もはじまりました。
そんな節目に、食や生活を見直そうと考えている方に、まずは、朝食を大切にすることをお勧めしたいと思います。
朝食を食べることが、食事全体の質だけでなく、生活の質にまで影響を及ぼすことが、多くの研究でわかっているからです。
まず、朝食を食べる人は食べない人に比べて食事全体の質がよく、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素や食物繊維の摂取量も多いという、東京大学の研究グループが厚労省の国民健康栄養調査のデータを解析した結果(1)を報告しています。
国民健康栄養調査では、1日食事記録法、すなわち、1日に食べたり、飲んだりしたものを記録用紙に記録してもらう方法で食事調査を実施しています。それも、食べる前に食べるものを秤で量る秤量法で行っています。
研究では、朝食を食べた人と朝食を食べなかった人の食事全体の質や栄養素の摂取状況を比較しています。朝食を食べなかったというのは、食事をしなかった場合、錠剤などによる栄養素の補給、栄養ドリンクのみの場合、菓子、果物、乳製品、嗜好飲料などの食品のみの場合としています。
食事の質は、栄養プロファイリングと呼ばれている評価法でスコア化しています。具体的には、積極的な摂取が推奨される9つの栄養素(たんぱく質、食物繊維、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、鉄、カリウム)と摂取量を制限すべき3つの栄養素(飽和脂肪酸、糖類、ナトリウム)で食品をランク付けし、各個人の食事調査の結果から食事の質をスコア化するというものです。
その結果、18歳から49歳の男女で朝食を食べない人の食事全体の質のスコアが527±6だったのに対して、食べる人では599±2と、朝食を食べる人は食べない人に比べて食事全体の質が有意に高いことがわかりました。
また、食品の摂取量では、朝食を食べる人は食べない人に比べて、野菜や果物、肉、卵、乳製品の摂取量が有意に多く、反対に、菓子類や清涼飲料水の摂取量が有意に少ないこともわかりました。
さらに、栄養素の摂取量では、朝食を食べる人は食べない人に比べて、ビタミンDやビタミンE、ビタミンB2、B6、葉酸、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅の摂取量が有意に多いこともわかりました。
このように朝食を食べるか食べないかは、単に食事の回数だけでなく、食事の質や栄養素の摂取量と強く関係することがわかりました。
朝食を食べるか食べないか、言い換えると、「朝食を大切にしているか、いい加減にしているか」の影響については、これまでも研究されています。
次に、東京大学の研究は、妊娠中の女性を対象に、朝食の欠食が栄養素の摂取量だけでなく、メンタルの健康度への影響も調査しています(2)。
被験者の妊婦の21.0%が朝食を欠食しており、朝食を食べる妊婦に比べてオメガ3脂肪酸やカルシウム、鉄、葉酸の摂取量が有意に少ないことを明らかににしています。
そして、朝食欠食者に眠気感や不安定感、不快感を感じている者が有意に多かったというのです。
オメガ3脂肪酸や鉄、葉酸と言えば、妊娠や出産に際しては特に重要な栄養素です。それだけでなく、妊娠中の母親の精神状態は子どもの出生後の心身の健康に影響を及ぼすことも知られています。
最後に当社が、2016年の5月に名古屋と東京で開催された、妊娠を希望するカップルを対象としたイベントにて、食習慣や睡眠習慣、体格について、284名に行ったアンケート調査でも、朝食の内容が食生活全体に影響を及ぼしているというを得ています。
https://www.babyandme.jp/wp2020/wp-content/uploads/2022/04/NL_20161019.pdf
朝食にたんぱく質源のおかずを食べているかどうか、大豆製品や魚類を食べる習慣があるかどうかが、他の食事バランスと密接に関連していたからです。
食生活の改善のポイントは朝食をバランスよく食べること、そして、大豆製品や魚類を食べることを習慣化することにありそうです。
因みに最新の国民健康栄養調査では、朝食の欠食率は、30代、40代の男性で、それぞれ、23.3%、25.8%、女性で、15.1%、15.3%と報告されています。
なぜ朝食の質が食事全体の質とリンクしているのかはわかりませんが、朝食を大切にする人は食生活をはじめ、健康全般に対する意識が高いのかもしれません。
栄養学的に朝食は食べるべきか、食べないべきかという議論もあるようですが、これまでの研究結果を見ていると、単に食事の回数や栄養素の摂取という問題だけではないように思います。
朝に、朝食を美味しくいただき、気持ちのよい1日をスタートしたいという、スタイルというか、生き方も含めて考えるべきなのかもしれません。
朝食だけでなく、食事は生活に密接に関連していて、朝食がおろそかになってしまうのは、たいていは、時間的、気持ち的余裕のなさが挙げられています。
そのため、朝食を見直すことは、生活を見直すことであり、これまでの研究で明らかなように、朝食の質は、そのまま生活の質に直結しています。
朝食を大切にすることの波及効果は、私たちが想像している以上に大きいようです。
文献:
1)Nutrients 2018; 10: 1551
2)Maternal health 2009; 50: 148.