編集長コラム

細川 忠宏

これからの季節、紫外線の避け過ぎに要注意!

2022年06月06日

ビタミンDが欠乏している女性は、充足している女性に比べて流産のリスクが高いという最新の研究結果が発表されました(1)。

メタアナリシスと呼ばれる研究方法で、ビタミンDの欠乏が流産のリスクにどのような影響を及ぼすのかを調査した4件の無作為比較対照試験の結果を統合し、解析した結果です。

ビタミンDは、昔から骨の健康に関わる脂溶性ビタミンの一種として知られてきましたが、妊娠、出産に極めて重要な役割を担っていることも知られるようになりました。

体外受精の成績に関しても、ビタミンDが充足している女性は欠乏している女性に比べて妊娠率が1.46倍、出産率が1.34倍になるという報告がメタアナリシスによってなされています(2)。

さらに、妊娠後は、妊娠糖尿病発症や妊娠高血圧腎症、胎児発育遅延、細菌性膣症、低出生体重児などのリスク増加に関連するとの報告までなされています。

ところが、こんな大切なビタミンであるにもかかわらず、ほとんどの女性で不足しているというのです。

実際、不妊治療クリニックで検査したところ、8割以上の女性が欠乏していたとの報告がなされています。

その理由として考えられているのが、なんと、日焼け止め、すなわち、紫外線対策なのです。

なぜなら、ビタミンDは紫外線にあたることで、体内でコレステロールからつくられているからです。

そもそも、ビタミンは、本来、体内でつくることが出来ないのですが、ビタミンDは例外で、必要とされる量のほとんどは、紫外線にあたることでつくられ、ビタミンDが含まれる食べ物も限られていて、主な摂取源は魚です。

もちろん、応急処置は、ビタミンDのサプリメントを摂取することですが、あくまで、一時的な解決方法であって、根本解決は、日光浴、そして、積極的に魚を食べることになります。

特に、これからの季節は紫外線が強くなり、その対策として日焼け止めの使用頻度が増えるようになると思いますが、過剰な対策が、大切なビタミンD欠乏を招いてしまうことを、是非とも、知っておいていただきたいと思います。

もちろん、無制限に紫外線を浴びることは、皮膚にダメージを与え、シワやシミの原因になるだけでなく、細胞のDNAに傷をつけてしまうことになります。

そのため、上手に紫外線と付き合うことが大切です。

紫外線の量は季節や場所、時間帯によって変わりますが、これまでの調査や研究では、1日に必要な日光浴の時間は、これからの季節であれば15~30分程度とされています。

日焼け止めをしないで、早朝に30分程度のウォーキングは適度な紫外線だけでなく、運動にもなりますし、脂の乗った魚を積極的に食べることは良い油を摂るという点でも、一石二鳥になります。

これからの季節、紫外線の避け過ぎには要注意です。


文献
1)Fertil Steril 2022 Article in Press Published:May 27, 2022
2)Hum Reprod. 2018; 33: 65