春は、植物は芽を出し、花々はつぼみをつけ、地中の虫が動き始める、生命力溢れる時です。人間にとってもこれからの季節は妊娠するにはよい環境であるはずです。
体外受精の治療成績にもそのことが反映されています。イギリスの病院で体外受精を受けた約3,000組のカップルの季節別の治療成績を比較した研究では、5〜9月にかけて実施された場合と11〜翌年2月にかけて実施された場合では、排卵誘発剤の量は前者のほうが少なく、妊娠率も20%と16%で、前者のほうが高かったというのです。
また、ブラジルの病院で実施された1,932組の顕微授精の治療成績を季節別に比べた研究では、受精率が、春が73.5%、夏68.7%、秋69.0%、そして冬が67.9%と、春が最も高く、冬が最も低かったとのこと。
このように、同じ治療内容でも、季節によって排卵誘発剤の量や治療成績に違いがあり、卵巣機能は春に最も高くなることが示唆されています。あらためて、人間は、自然界の影響を強く受けていることを思い知らされます。
そうであれば、自然界に生命力が溢れる季節を迎え、私たちも生活リズムを自然のサイクルにあわせることで、その恩恵を最大に享受したいものです。
そのためのポイントは体内時計をしっかりリセットするということです。体内時計は1日25時間なので、毎日きちんとリセットしなければ、どんどん乱れていってしまいます。
年齢が高くなればリセット力が低下していくのでなおさらのことです。そのため、毎日、意識して体内時計をリセットし、生体リズムを整えたいものです。
体内時計をリセットするポイントは「食事」、「運動」、「睡眠」で、具体的には以下の通りです。
1)毎朝、太陽の光をゆっくり、しっかり浴びる。
「光」は体内時計に強い影響を及ぼします。起床後、すぐに窓をあけて、太陽の光を浴びることで、体内時計が補正されます。
反対に、夜に強い光を浴びることを習慣化してしまうと、生体リズムが確実にずれていってしまいます。
2)夜のメラトニン分泌を活性化させる。
メラトニン分泌が活発になると、良質な卵が育ちやすくなるとの研究報告もありますから、直接的な効果が期待できるかもしれません。
メラトニン分泌を活性化させるための工夫は3つあります。日中にできるだけたくさんの光を浴びておくこと、十分な運動をすること、そして、メラトニンを補充することです。
3)良質のたんぱく質を含んだ朝食を食べる。
朝食、それも、パンとジュースとか、サラダだけというような簡単なものではなく、良質のたんぱく質を含んだバランスのとれた、しっかりした内容の朝食を食べることです。
たんぱく質と糖質を含んだ朝食が体内時計のリセットを促すことがわかっているからです。
以上が基本ですが、さらに、生体リズムを整える生活習慣を挙げます。
◎早寝早起き(毎日同じ時刻に。特に、起床時刻)
◎朝のウォーキング
◎時々、時計を見る
いかがでしょうか?
春は間違いなくやってきます。
あとは、私たちがその恩恵を享受できる状態になっているか、です。