編集長コラム

細川 忠宏

炎症を起こしにくい食べ方、起こしやすい食べ方

2023年08月06日

炎症を起こしにくい食事をしている女性は、そうでない女性に比べて不妊症のリスクが低いという研究報告がなされています。

普段の食事内容が炎症を起こしやすいかどうかという視点は、最近注目されはじめた切り口で、その指標として用いられているのが食事炎症性指数(Dietary Inflammatory Index)で、その頭文字をとってDIIスコアと呼ばれています。

DIIスコアとは、約2000件の先行研究から開発されたもので、このスコアが低いほど炎症を抑える食事で、高いほど炎症を促進する食事と評価されます。

そもそも、炎症反応とは細菌等が体内に侵入しようとした時、体を守るために免疫機能が働くことで起きる防御反応であり、急性炎症と呼ばれている正常な反応です。

その一方、慢性炎症は軽度の炎症が体内で長期にわたって続く状態で、自覚症状はありません。必ずしも細菌やウイルスの感染によって生じるわけではなく、さまざまな病気と関連すると考えられています。

そして、慢性的な炎症状態には食生活が影響していることが知られていましたが、慢性炎症を起こしやすい食事は不妊症に関与する可能性があるというわけです。

であれば、妊活カップルにとって炎症を起こしにくい食事、すなわち、DIIスコアの低い食事を心がけることが有利になるかもしれません。

これまでの研究は主にハーバード大学によるものでアメリカ人の食生活がベースになっています。そこで得られた知見をもとに日本人の食生活にあったDIIスコアの算出方法が開発されていますのでご紹介します。

炎症促進性食品と週あたりの摂取頻度別加算スコアは以下の通りで、見方は各食品の週あたりの摂取頻度が左側の場合は1点加算、右側の場合は2点加算します。ただし、白米は1日の摂取頻度が3杯以上の場合、パンや小麦麺の場合は毎日食べる場合、それぞれ1点加算の1パターンです。食べない場合は0です。

肉:2〜6/7以上
加工肉:2〜6/7以上
臓物:2〜6/7以上
青魚以外の魚:5〜6/7以上
トマト:5〜6/7以上
砂糖入り清涼飲料水:5〜6/7以上
卵:5〜6/7以上
白米(1日に):3杯以上
パン、小麦麺:毎日

一方、炎症抑制性食品と週あたりの摂取頻度別減点スコアは以下の通りです。尚、ビールは1点減点のみです。

緑色野菜:7〜13/14以上
黄色野菜:5〜6/7以上
緑茶:7〜13/14以上
コーヒー:7〜13/14以上
生ジュース:5〜6/7以上
ワイン:2〜4/5以上
ビール:5以上
青魚:2〜4/5以上

これらの合計スコアが低いほど炎症を起こしにくい食べ方、高いほど起こしやすい食べ方になります。

ただ、くれぐれも誤解しないでいただきたいのは、炎症促進食品は食べてはいけないわけではなく、全体の食べ方です。

冒頭で紹介した研究ではスコアが-2.02未満のグループが最も不妊症リスクが低かったとのことです。

驚いたのは、炎症を起こしにくい食べ方は地中海食に極めて似ていることで、精製度の低い穀物を中心に、野菜では緑黄色野菜、魚では青魚を多く食べることがポイントになります。