編集長コラム

細川 忠宏

身体に備わった自分を守る働きを意識する

2024年04月07日

最近、有害性が懸念されている化学物質「PFAS」が各地の河川や地下水から検出されたという報道が相次いでいます。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高いことから、水道水や井戸水などから体内に取り込まれる可能性があるそうです。

そして、蓄積すると、生殖機能を低下させるおそれがあるとの研究報告があります。

これまでも、有機塩素系殺虫剤・農薬のDDTやプラスチック容器から溶け出すビスフェノールA(BPA)、さらには、大気中の汚染物質であるPM10やPM2.5なども、妊娠や出産にマイナスの影響を及ぼす可能性が指摘されています。

そもそも、すべての化学物質は多少なりとも有害性がありますが、現代社会では、さまざまな化学物質が私たちの生活のあらゆる面で、なくてはならないものになっています。

今後は、もっと身近なものになることはあっても、少なくなっていくことは考えにくいところです。

であれば、その対策として化学物質が体内に入るのを神経質に避けても限界があります。入れないことはもちろんのこと、私たちの身体に備わった、無毒化や排泄作用を高めることも大切なのではと思います。

それは、もともと私たちの身体に備わっている、あらゆる有害なものからの自己防御反応のことです。

たとえば、ビタミンB群にはDDTの生殖機能への有害性に対する抑制作用があります。 ビタミンB12が充足している女性ではDDTレベルと妊娠率は関連しませんが、ビタミンB12が不足し、かつ、DDTレベルが高い女性では妊娠率が低く、ビタミンB群濃度とDDT、妊娠率との相互作用が確認されています。

また、大豆食品や葉酸にはBPAの生殖機能へのマイナスの影響を打ち消す作用があります。BPAは食器や容器などに使用され、そこから溶けだし、体内に取り込まれていると考えられていますが、大豆食品の摂取量が少ない、もしくは、葉酸濃度が低い女性ではBPA濃度が高くなるほど体外受精妊娠率が低くなる一方、大豆食品の摂取量が多い、もしくは、葉酸濃度が高い女性ではBPA濃度が高くなっても妊娠率は低下しません。

さらに、葉酸には大気汚染物質による生殖機能の低下を緩和するという報告までなされています。

必須栄養素には、化学物質の生殖機能へのマイナスの影響を打ち消してくれる働きを有するものがあるようです。

加工食品を多量に食べることは、化学物質を取り入れやすくなる一方、栄養バランスが悪くなり、必須栄養素が不足するリスクが高くなります。

一方、新鮮な食材をメインにバランスよく食べることは、化学物質を取り入れたり、必須栄養素が不足したりするリスクの低下につながります。

いずれかが習慣化すると、マイナスとプラスの差の蓄積の影響は小さくはないかもしれません。