編集長コラム

細川 忠宏

発酵食品で腸内環境を整えよう

2024年07月07日

子宮内フローラ検査が普及し、子宮内の細菌叢の着床や妊娠への影響について関心が高まっています。

子宮内細菌叢と妊娠しやすさの関係については、まだまだわかっていないことが多いものの、そもそも、腟内細菌叢の不良により細菌性腟症やカンジダ症にかかりやすくなったり、そのまま妊娠すると早産のリスクを高めたりすることがわかっていました。そのため、女性生殖器内の細菌叢を良好に保つことはプレコンセプションケアの観点からも大切であることは間違いありません。

ただし、生殖器内の細菌叢だけでは不十分で、腸内の細菌叢にも目を向けておくことも、もっと大切なことです。なぜなら、腸内細菌叢は子宮内細菌叢と密接に関係しているからです。子宮内細菌叢を改善しても、腸内細菌叢が乱れていては、元の木阿弥になりかねません。

腸内細菌叢の改善と妊娠しやすさの関係を調べた研究があります。妊娠希望女性1,729名(18-38歳)を無作為に2つのグループにわけ、一方にはマルチビタミンとミオイノシトールやプロバイオティクスを、もう一方にはマルチビタミンだけを摂取してもらい、1年間の累積妊娠率を比較しました。その結果、BMIが25以上の太り気味の女性ではプロバイオティクスを摂取していたグループのほうが累積妊娠率が高くなり、腸内細菌叢の改善によって妊娠する迄の期間が短縮された可能性が示唆されています。

このように子宮内の細菌叢だけでなく、腸内の細菌叢を良好に整えておくことも妊活カップルには重要なことがわかります。
さて、腸内細菌叢を整えるには食事の改善がお勧めで、特に発酵食品の習慣的な摂取がポイントになります。

また、発酵食品を習慣的に食べることで腸内環境を整えることによる影響は、妊娠しやすさだけでなく、出生児の心身の発育にも良好な影響を及ぼすという研究報告も、最近、相次いでなされています。

その中の一つに、環境省によるエコチル調査という、母親の生活習慣と出生児の健康の関係を調べる研究があります。

それによりますと、発酵食品を習慣的に食べていた女性のお子さんは、そうでない女性のお子さんに比べて3歳時点の神経発達が良好であるというのです。

ヒトと共存している細菌による、宿主の心身の健康への影響のメカニズムは、決して単純なものではなく、直接的、間接的なものも含めて、極めて複雑です。

私たちに出来ることとしては、特定の食材や食品、サプリメントに偏ることなく、さまざまな種類の食材をバランスよく食べること、それに尽きます。

発酵食品の場合でも、馴染みのあるものだけでも30種類以上もあり、それぞれに異なる特徴があります。

チーズや納豆、味噌、ヨーグルト、乳酸菌飲料(サプリメント)、酢、ぬか漬け、キムチ、甘酒等、普段の食生活に組み入れて、習慣的に食べてみてはいかがでしょうか?