男性の血圧が正常範囲内の少し高めでも、精子の質が低下するだけでなく、パートナーの体外受精の妊娠率が低下し、流産率が上昇することが、中国で実施された研究で明らかになりました。
これまで、男性不妊患者では男性不妊でない男性に比べて、高血圧や糖尿病等の生活習慣病にかかっている割合が高いことが知られていて、高血圧を治療すれば精子の質が高くなるという研究報告もなされています。
ところが、高血圧に至らなくても、男性の妊孕能(妊娠させる力)にマイナスの影響を及ぼすことがあるというから驚きました。
高血圧は、血圧が高いという病態ですが、具体的には、収縮期(上)の血圧が140以上、拡張期(下)の血圧が90以上とされています。今回の研究で、妊娠や出産に不利になることがわかった「ちょっと高め」というのは、上が120から140で、下が80から90というレベルです。
要するに、一般的な高血圧かどうかは、あくまで、内科的な指標で、このままの状態が続くと心筋梗塞や脳卒中、腎臓病といった重大な病気を招くことになるので、治療やケアが必要なレベルということであるということを意味します。
その一方、妊活という観点から言えば、上が120以上、下が80以上という状態が続くとパートナーの女性が妊娠しにくくなるレベルであるということになります。
つまり、血圧が高いかどうかについては、内科的な指標と妊活的な指標は異なるということに他なりません。
このことは、男性の健康レベルが低下すると、真っ先に影響を受けるのは「精子」であることを物語っています。
そのため、妊活男性、特に、パートナーの女性の年齢が高く、かつ、体外受精や顕微授精を受けている男性にとって、健康診断で問題がなかったからといって大丈夫とは言い切れません。
パートナーの妊娠や出産にマイナスにならない精子の質を維持し、高めるためには、世間で言うところの健康レベルではなく、最高レベルを目指すべきといっても過言ではありません。
さらに、最近の研究では妊娠(受精)前の父親になる男性の精子の質は、妊娠しやすさだけでなく、出生児の心や身体の健康状態にまで影響することがわかってきました。
つまり、妊娠できるかどうかという目先の話だけではない、ということを知っておく必要があるというわけです。
男性の血圧が高くなる生活や環境要因には、運動不足、睡眠不足、長時間の労働、過剰な飲酒、寒冷、ストレスなどがあります。
気をつけたいのは血圧が高くなっても、なんの自覚症状もないので、気がつかないうちに精子へのダメージが進行することになる可能性があるということです。
男性のプレコンセプションケアは極めて大切です。