プレとは「前」、コンセプションは「受胎」、そのため、プレコンセプションケアとは、妊娠前からカップルが自分たちの生活や健康に向き合うことです。
プレコンセプションケアの中心にあるのがDOHaD(ドーハッド)という概念です。DOHaDとはDevelopmental Origins of Health and Diseaseの略で、妊娠前のカップルの栄養状態が出生児の長期間に渡る健康や病気のかかりやすさにまで影響するという学説です。
一言で言えば、妊娠する前のカップルの栄養状態が、やがて生まれ来る、お子さんの一生の健康にまで関係するということです。
たとえば、カップルの妊娠前の食事の質は出生児の小児アレルギー発症や神経発達、メンタルヘルスに影響する、また、妊娠前の健康的な生活習慣の数が多いほど出生児が成人してから生活習慣病にかかるリスクが低くなる等の研究報告が多数なされています。
そのため、当初、DOHaDは 20 世紀における最大の医学学説とされていましたが、この20年間の多くの研究によって「学説」から「医学的事実」となりました。
驚かされるのは、妊娠前の食事の質や生活習慣の影響が、出生児の子どもの頃だけでなく、成人後の体質にまで及ぶということ、また、母親になる女性だけでなく、父親になる男性の妊娠前の栄養や健康状態までも影響するということです。
そのため、健康なお子さんを授かることが出来るよう、妊娠してからではなく、妊娠する前から、女性だけなく、男性も、すなわち、カップルが一緒になって食生活や生活習慣を見直し、健康的な生活を心がけることがとても大切です。
ここで妊活におけるプレコンセプションケアについて考えてみたいと思います。
妊活というのは、妊娠するための取り組みではあるのですが、同時に健康なお子さんを授かるための準備期間にもなり得ます。
なぜなら、なんの苦労もなく、妊娠、出産していたら、食生活や生活習慣を見直す機会がなかった可能性が高いからです。
ましてや、計画しないまま授かったような場合はなおさらのことです。
そのため、思うように授からないことに苦労したり、悩んだりすることは、もちろん、大変な経験であることは間違いありませんが、そのことによって、カップルで妊活に取り組み、健康意識が高まれば、未だ見ぬお子さんにとても大切な贈り物を届けることになるはずです。
不運な経験にしか思えないことが、とても貴重な機会になり得るということです。
食生活や生活習慣の大切さを知って、それらに対する意識が高まり、その結果、家族の長い人生のQOLが高まることになれば、それこそ、災い転じて福となすことが出来るというわけです。
いずれにしても、私たちの大切な生命が維持されるメカニズムについて考えることは、そうそうありません。
このように、不妊という、それまで予想だにしていなかった経験は、決して、ネガティブな面ばかりではないことを願うばかりです。