ドクターにインタビュー

vol.01

【1】 不妊、不妊の重症化は予防できる、予防すべき

不妊予防協会理事長 久保春海 先生
東邦大学医学部名誉教授 渋谷橋レディスクリニック院長

久保春海

【1】 不妊、不妊の重症化は予防できる、予防すべき

細川)
久保先生は、長年、日本の不妊治療の第一人者として、多くの患者さんの治療にあたってこられただけでなく、研究分野でも、また、専門医の育成においてもリーダーシップを発揮してこられた、大変著名な先生です。 そのような先生が、"不妊は予防することが大切である"とのお考えから、日本不妊協会を立ち上げられたということは、不妊症の原因として、生活習慣やライフスタイルなどの後天的なものが多いということでしょうか?
Dr.)
その通りです。実際のところ、先天的な問題で防ぎようのない不妊はごく僅かで、生活習慣や生活環境など、後天的な理由による不妊がほとんどで、全体の80%以上をしめています。
細川)
そんなに多いのですか。
Dr.)
はい。ただし、そのことを知っている人はほとんどいませんね。
細川)
"避妊を止めればすぐに妊娠できると思っていた"、"なんで私たちのところには赤ちゃんがやってきてくれないのかわからない"、不妊に悩んでおられる方々は口を揃えてそのようにおっしゃいます。
Dr.)
そうです。普段から病気がちな人であればまだしも、健康な女性や男性は、自分たちだけは望めばいつでも子どもをつくることができる、不妊であるはずがない、そう思い込んでいます。
細川)
はい。
Dr.)
ところが、不妊症というのは現在の自分の健康状態と無関係な原因によって起こる、やっかいな病気なのです。
細川)
現在の自分の健康状態と無関係な原因とおっしゃいますと?
Dr.)
喫煙や飲酒習慣、性感染症、特にクラミジアの感染が若い人の間で大変増えています。肥満や過度のダイエット、子宮内膜症や子宮筋腫など、さらには、晩婚化に伴う年齢の問題など、これらすべてが不妊の原因になり得ます。
細川)
まさに現代に特有の生活習慣だと言えますね。
Dr.)
現代社会は、不妊予備軍をどんどん増やしていると言っても過言ではないのです。
細川)
よく分かりました。そこで、啓蒙や意識改革が必要だということですね。
Dr.)
そういうことです。不妊は予防できる、つまり、防ぎようがあるのです。いくら頑張っても妊娠できないという精神的な辛さは当事者にしか分からないものでしょう。また、これまでの生殖医療の進歩には目を見張るものがあり、高度な生殖補助医療によって、それまで子どもをあきらめざるを得なかったカップルでも妊娠が期待できるようになりましたが、必ずしも全てのカップルに妊娠、出産を保障できるものではありません。その上、肉体的、精神的、経済的負担も決して小さいものではありません。とにかく、不妊にならないに越したことはないのです。
細川)
よく分かります。
Dr.)
また、残念ながら不妊になってしまったとしても早く妊娠するに越したことはありません。
細川)
それも不妊予防の範疇になるのでしょうか?
Dr.)
もちろんです。不妊の重症化を予防するということです。
予防医学でいうところの二次予防※です。

※日本不妊予防協会では、不妊予防のあり方として、不妊を未然に防ぐための教育・啓発、生活習慣、生活環境の改善、感染症防止対策などを一次予防、不幸にして発症した不妊を検診等によって早期に発見し、さらに治療や保健指導などを行い、不妊症の重症化を防ぐ対策を行うことを二次予防、そして、三次予防を、難治性不妊から社会復帰するための施策。すなわち、合併症、再発防止、心身のリハビリテーションなどがこれに含まれるとしています。

細川)
このサイトの会員の方々にとって、最も関心の高いテーマだと思います。
Dr.)
そうでしょうね。 ところが、現在の生殖医療は治療中心で、予防に取り組んでいるとはとても言えません。 そこで、不妊予防というわけです。
細川)
よく分かりました。

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