ドクターにインタビュー

vol.01

【3】 夫婦生活の回数と満足度が高いほど妊娠率も高くなる

不妊予防協会理事長 久保春海 先生
東邦大学医学部名誉教授 渋谷橋レディスクリニック院長

久保春海

【3】 夫婦生活の回数と満足度が高いほど妊娠率も高くなる

Dr.)
不妊治療で通院を始めると、「タイミング指導」からスタートするのが普通です。 妊娠の可能性の高い日をドクターが指示するわけです。
細川)
この日に頑張ってくださいと。
Dr.)
そういうことです。 ただ、そう言われても、男性にとっては大変なプレッシャーなわけです。 中には、そのことがストレスになって、 射精できなくなったり、ED※になったりする男性が増えています。

※勃起機能の低下のこと。
英語で「Erectile Dysfunction」、日本語で「勃起障害」あるいは「勃起不全」と訳されます。

細川)
タイミング指導の副作用というわけですね。 お子さんを望む気持ちが強いほど、そうなってしまうかもしれません。
Dr.)
ところが、アメリカ生殖医学会は、生理の後、すなわち、 低温期に夫婦生活を出来るだけ多くもつほうが 妊娠率が高くなるとの研究結果を発表しているのです。 現実的には、2、3日に1回くらいのペースになるとは思いますが。
細川)
タイミング指導はそれほど効果的ではないということでしょうか?
Dr.)
タイミングを指示することによって、 かえって、夫婦生活の回数が少なくなってしまえば、そういうことになります。 タイミング指導というのは、"その日だけ"夫婦生活をもちましょうということではなく、 "その日も"夫婦生活をもちましょうというのが正しい理解なのです。
細川)
つまり、夫婦生活の回数が大切だということですね。
Dr.)
はい。夫婦生活の回数が多いほど、そして、
1回あたりの満足度が高いほど、妊娠率が高くなるとの報告があるのですね。
細川)
回数だけでなく、満足度も大切なのですね。 ただ、回数が多くなると、結果としてタイミングが合う可能性が高くなるということで分かるのですが、 満足度も影響するのでしょうか?
Dr.)
動物生理学的な観点でみると、排卵という生理現象はいろいろな刺激によっておこることが分かっています。 動物によっては、性交による刺激で排卵が起こる動物もいるのです。 そして、そういうことは人間にだってあり得るわけです。 生理後のセックスで妊娠することがあるのもそのためだと考えられます。
細川)
とても興味深いことですね。
Dr.)
また、性感が高まることで、 子宮や卵管の蠕動運動が活発になり、射精された精子を運ぶ働きも高まります。
細川)
精子と卵子が出会いやすいようになるわけですね。
Dr.)
そうです。私たちも、 人工授精の当日の夜に夫婦生活を持つことを勧めます。
細川)
性交によって、生殖機能を高め、 治療効果を確実なものにするということですね。
Dr.)
自然な夫婦生活が基本だということです。 当たり前なことですが、不妊に悩むようになると忘れがちなのも事実です。
細川)
はい。
Dr.)
不妊患者さんの4割くらいはセックスレスとの調査報告があります。
細川)
それは、不妊の原因なのでしょうか? それとも、結果なのでしょうか?
Dr.)
どちらもあるでしょうね。 晩婚化の進んだ現代では、昔と違って、結婚までに数年の性生活があることが多いでしょう?
細川)
そうですね。
Dr.)
ですから、そんな期間が長くなれば、なるほど、セックスの回数も少なくなって当然なのですね。
細川)
それに伴って、妊娠率も低くならざるを得ないというわけですね。
Dr.)
そうです。 また、不妊治療を受けてからセックスレスになるカップルも多いと言われています。
細川)
治療を受けているのだから、頑張らなくてもいいだろうということですね。
Dr.)
そういうことですね。
細川)
本末転倒ですね。
Dr.)
自然な夫婦生活を楽しむということ、 これも大切な不妊予防になるというわけです。
細川)
よく分かりました。

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