ドクターにインタビュー

vol.03

ちゃんと知っておきたいお薬のこと

越田光伸 先生(越田クリニック院長)

越田光伸

【1】もっともポピュラーなのは排卵誘発剤

★もっともよく使われるのは卵胞を育てる薬

細川)
タイミング指導や人工授精までの一般不妊治療では、どんなお薬が使われるのでしょうか?
Dr.)
最もよく使われているのは、「クロミフェン」という排卵誘発剤です。卵を育てるお薬です。 排卵していないとか、排卵しづらいといった場合に使われます。
細川)
排卵障害の治療ということですね。
Dr.)
そうです。妊娠するためには、まずは、卵がちゃんと育って、排卵されなければなりませんからね。
細川)
はい。
Dr.)
また、たとえ、ちゃんと排卵がある方でも、低温期が長かったり、 高温期への移行に時間がかかったり、高温期が短いといった場合にも使われます。
細川)
その場合はどのような効果が期待できるのでしょうか?
Dr.)
排卵誘発剤で卵巣の働きを助けることで、周期が整い、卵がしっかりと育つようになります。 周期が整うと、排卵の機会が増え、排卵のタイミングが分かりやすくなり、妊娠しやすくなります。
また、卵がしっかり育つと、結果として、卵の質がよくなったり、 黄体ホルモンの分泌が促進されると、高温期が安定するようになり、妊娠しやすくなります。
細川)
なるほど。その他、検査の結果、どこにも異常がない、いわゆる原因不明不妊の場合でも クロミフェンが処方されることが多いようですが。
Dr.)
そうですね。原因不明の不妊症の場合でも、クロミフェンを服用することで妊娠の確率が高くなります。 おそらく、卵巣の機能を高め、卵の発育がよくなることで、妊娠しやすくなるからでしょう。 このように、クロミフェンは手軽に使え、妊娠の助けになるという、メリットがとても大きい薬であると言えます。
細川)
クロミフェン以外にはどんなお薬が使われるのでしょうか?
Dr.)
クロミフェンは、どちらかと言えば、作用の穏やかな飲み薬です。 もしも、クロミフェンの効き目が思わしくない場合には、より強い作用のある排卵誘発剤を使います。
細川)
注射薬ですね。
Dr.)
そうです。クロミフェンのような飲み薬の排卵誘発剤は、脳に働きかけて、 卵胞を育てるホルモン、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌量を増やそうとします。
細川)
言ってみれば、間接的に卵巣に働きかけるわけですね。
Dr.)
そういうことです。
それに対して、注射薬は、FSHそのものを注射します。 卵巣を直接刺激しますから、当然、排卵誘発作用は強くなります。
細川)
飲み薬と注射薬では卵巣への働きかけ方が違うわけですね。
Dr.)
その通りです。また、注射薬には、 FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)を含むhMG(ゴナドトロピン)製剤と LHをほとんど含まないFSH製剤があって、患者さんの状態に応じて、使い分けます。
細川)
よく分かりました。
Dr.)
また、排卵誘発剤で卵胞を育てた後に、hCGという注射薬を使って、より確実に排卵させることもあります。 卵胞が十分に発育したことを確認して、hCGを注射します。 その後、36~48時間で排卵が起こります。
細川)
排卵誘発剤についてよく分かりました。
Dr.)
排卵誘発剤の使い方としては、1個の卵子を育て、排卵障害を治療したり、排卵を整えたりする以外にも、 複数の卵胞を育て、妊娠率を高めるために使う場合もあります。 これは、主に、体外受精や顕微授精のような高度生殖補助医療での使い方です。

★着床しやすくしたり、ホルモンバランスを整えるための薬

細川)
卵胞を育てるお薬の他にはどんなお薬があるのでしょうか?
Dr.)
「ルトラール」や「デュファストン」などの黄体ホルモン製剤で、 黄体ホルモン(プロゲステロン)を補充して、子宮内膜を着床しやすくして、 受精卵が着床するためにサポートします。
細川)
黄体ホルモンの分泌が不十分と考えられる場合ですね。
Dr.)
そうです。着床した後の妊娠の維持のサポートにもなります。
細川)
なるほど。
Dr.)
また、プロラクチンというホルモンの値が高い場合には、 「カバサール」や「テルロン」などのお薬を使って、プロラクチン値を下げます。
細川)
高プロラクチン血症ですね。
Dr.)
はい。プロラクチンは、本来は、出産後に、母乳の分泌をさせて、 すぐに妊娠しないように、排卵させないように働きかけるホルモンなのですが、 出産していないのに、プロラクチンがたくさん出ると、排卵しづらくなってしまうというわけです。
細川)
分かりました。
Dr.)
最後に、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)による排卵障害の治療に、糖尿病のお薬が使われることもあります。
細川)
ありがとうございました。

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