ドクターにインタビュー

vol.03

ちゃんと知っておきたいお薬のこと

越田光伸 先生(越田クリニック院長)

越田光伸

【2】薬を味方にするために知っておきたいこと

★多胎妊娠とOHSS(卵巣過剰刺激症候群)

細川)
薬というと、やはり、副作用が心配という声をよく聞きます。
Dr.)
薬には副作用はつきものですが、正しく知って、正しく付き合えば、 お薬は強い味方になってくれます。
細川)
はい。
Dr.)
まず、排卵誘発剤の副作用で、最も避けなければならないのは、 「多胎妊娠」と「OHSS(卵巣過剰刺激症候群)※」です。

※OHSS(卵巣過剰刺激症候群)
主に、hMG注射とhCG注射の2種類の排卵誘発剤を使用するゴナドトロピン療法によって起こり得る副作用のこと。卵巣が腫れ、お腹に不快感や下腹部の膨満感を伴います。重症化すると、腹水や胸水がたまり、入院が必要になることがあります。

細川)
多胎妊娠とOHSS。
Dr.)
そうです。主に、hMG注射を使う場合に注意しなければならない副作用です。 ただし、これらは注射薬そのものの副作用ではありません。 注射が効き過ぎて、たくさんの卵が育ってしまうことによるものです。
細川)
なるほど。
Dr.)
双子や三つ子は、妊娠中や出産時に、お子さんやお母さんにとって都合の悪いことがおこりやすくなります。 また、OHSSは、卵巣が腫れたり、お腹に水がたまったりして、症状が重くなると、入院治療が必要になります。
細川)
このような副作用は、防ぐことができるのでしょうか?
Dr.)
ほぼ可能です。 当院では、一般不妊治療では卵胞が3個以上発育した場合には、 多胎妊娠を避けるために、その周期の治療を中止します。
細川)
OHSSについてはどうなのでしょうか?
Dr.)
卵胞の発育状況に応じて、薬の量や投与方法を変更します。 また、PCOSなど、予めたくさんの卵胞が育ちやすいことが分かっている場合には、 少ない量の薬でスタートして、徐々に増やしていくという方法を採用することで予防できます。
細川)
ドクターが正しく管理すれば、それほど心配する必要はないわけですね。
Dr.)
その通りです。

★排卵誘発剤でかえって妊娠しづらくなってしまう!?

細川)
それでは、飲み薬の副作用について教えてください。
Dr.)
クロミフェンを飲むと、人によっては、頚管粘液の質が悪くなったり、子宮内膜が薄くなって、 妊娠しづらくなってしまうことがあります。 これは、クロミフェンの抗エストロゲン作用※によるものです。

※抗エストロゲン作用
エストロゲン(女性ホルモン)の働きを低下させてしまう作用のこと。クロミフェンのこの作用によって、脳は卵胞が育っていないと錯覚し、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)を産生、分泌を増やします。

細川)
諸刃の剣ということですね。
Dr.)
そうです。
ただし、医師はそのような副作用が起こらないように、慎重に服用量や服用期間を決定します。 そして、副作用が起こった場合は、薬や治療法を変更します。
細川)
よく分かりました。 また、排卵誘発剤によるホルモン療法で、サイクルが乱れてしまうことがあると聞きますが。
Dr.)
まれですが、おこり得ることです。 薬への反応の仕方は、人によって異なるもので、必ずしも想定したものにならないことがあります。 もちろん、そのような場合には、その方にあった方法に変更します。
細川)
なるほど。 生殖器官以外の副作用についてはいかがでしょうか?
Dr.)
頭痛やごくまれではありますが目がかすんだりします。 副作用と思われるような症状が出た場合には、遠慮せず、すぐに医師に相談してください。
細川)
副作用は、多くの場合、適切な対策を講じることで、予め避けることが出来たり、そのマイナスの影響を出来るだけ小さく出来るわけですね。
Dr.)
その通りです。

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