ドクターにインタビュー

vol.05

【1】一般不妊治療でよい結果がえられない場合

塩谷雅英 先生(英ウィメンズクリニック院長)

塩谷雅英

【1】一般不妊治療でよい結果がえられない場合

1-1 原因を見直す

細川)
本日は、不妊治療でなかなかよい結果が得られないという方への アドバイスをいただければと思います。
Dr.)
分かりました。それでは、一般不妊治療でよい結果が出ない場合と 体外受精などの高度生殖補助医療でよい結果が出ない場合に分けてお話ししたいと思います。
細川)
よろしくお願いします。
Dr.)
まずは、人工授精などの一般不妊治療でよい結果が得られないという場合には、 原因に対して適切な治療ができていない可能性があります。 そのため、原因を見直してみることが大切です。
細川)
改めて原因を見直してみる必要があるということですね。
Dr.)
そうです。 よくあるのは、卵管に問題があるのにもかかわらず、 原因不明として、人工授精などの治療を繰り返すというケースです。
細川)
卵管の異常をみつけられていないかもしれないと。
Dr.)
はい。なぜそのようなことが起こるのかと言いますと、意外に思われるかもしれませんが、 子宮卵管造影検査だけで卵管の状態を完全に把握することが難しいからです。
細川)
それほど精度の高い検査ではないということでしょうか?
Dr.)
そうです。そもそも、卵管は単なる管というか、パイプではありません。 非常に繊細な構造をもった臓器の一つなのです。 それをレントゲンに映った影だけで、 通っているか、いないか、正常か、異常かに分けてしまうのは、 少々、乱暴なところがあるわけです。
細川)
なるほど。
Dr.)
そのため、卵管の異常は見逃されてしまうことがあるというわけです。 また、このことは、決して、卵管の異常に限りません。 不妊症の原因は、通り一遍の検査だけで突き止めることが難しいところがあるのです。
細川)
はい。
Dr.)
不妊症の原因は一つであるとは限りませんし、 治療を始める時点では、その原因がすべて明らかになっているとも限りません。 そのため、原因に対して適切な治療が行えているか、また、見逃している原因はないか、 常に見直し、そして、原因に対してピンポイントな治療を行うことが大切です。

1-2 原因を突き止め、より適切な治療を実施するために

細川)
それでは、原因に対してより適切な治療を行うために、 どのようなことが行われているのでしょうか?
Dr.)
まずは、検査の精度を高めるためにさまざまな工夫をしています。 たとえば、卵管の異常を調べる子宮卵管造影検査では、 単に通っているか通っていないかをみるだけではなく、 どれくらいの圧力を加えれば通るのかを数値で分析しています。
細川)
通り具合をチェックするということですね。
Dr.)
それによって、卵管の状態をより正確に把握することが可能になります。 ただし、特殊な機械が必要ですので、どこのクリニックでも可能なわけではありません。
細川)
施設によって違いがあるわけですね。
Dr.)
また、当院では、子宮卵管造影検査とともに、子宮鏡検査を、同じ日に実施しています。 胃カメラのように、小型カメラで子宮の中を調べる検査です。
細川)
子宮卵管造影検査と子宮鏡検査がセットになっているというわけですね。
Dr.)
そうです。子宮の中にカメラを入れ、子宮内部の様子がモニターに詳しく映し出されます。 そうすると、左右の卵管の入り口の穴が見えてきます。 もちろん、卵管の入口だけしか見えません。 ただ、卵管の一部にしか過ぎませんが、子細に観察することで、 卵管全体の状態を推測することができるのです。 子宮卵管造影検査は、レントゲンに映った影をみるのに対して、 子宮鏡検査は、直接、子宮の内部をみることができます。
細川)
補完的な効果で、卵管の状態を知る精度が高まるということですね。
Dr.)
そういうことです。 また、子宮鏡検査で子宮内部を直接調べてみると、 内診ではみつけることができなかった子宮内膜ポリープや子宮内癒着などの病変が みつかることがあります。
細川)
着床障害の原因がみつかる可能性があるということですね。
Dr.)
はい。実際に、原因不明不妊と診断されることが多いのですが、 その場合でも、卵管異常や子宮内の病変が見過ごされていることが少なくありません。 このように、一般不妊治療では、見逃されている原因がないかどうか、 もう一度、見直すことが大切です。

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